威風堂々サブマリン、侍3連覇のカギは牧田

中島大輔

プレッシャーをパワーに変えるメンタル

 11年4月17日に西武ドームで行われた日本ハム戦。チームが開幕から本拠地6連敗中のなか、牧田は完投で初勝利に導いた。試合後、マウンドに上がった正直な心境を聞くため、「“多少”はプレッシャーがあったのでは?」と質問すると、牧田は安堵の表情を浮かべて語り出した。
「多少というか、すごくありましたよ。他の先発、中継ぎの見えないプレッシャーが伝わってきました。中継ぎはシーズンが始まってからけっこう投げています。だから完投しようと思って投げました。見えないプレッシャーはたくさんありましたよ。でも、攻めて負けるのはしょうがない。思い切り自分の仕事をするだけです」
 味方の気持ちを背負ってマウンドに上がる。しかし、気負いすぎない。『言うは易く行うは難し』だが、牧田はプレッシャーをパワーに変えるメンタルを備えている。

 昨季の夏場、先発を務めていた牧田にクローザーの難しさをたずねたことがある。
「失投できないことですね。コンピューターではないから失投はあるんですが、失投を少なくすることが求められます。結局、チームが相手より1点多ければいいので、点を取られてもいい。そうは言っても、1−0はきついですけどね。1球1球が勝負。魂を込めて投げないと、先発、チームの勝ちが消えてしまうので、大変なポジションです。
 プレッシャー? そうですね。でも、絶対にゼロを続けることはできない。岩瀬(仁紀、中日)さんでも打たれることはあるんですから。点を取られて、引きずっても前に進めない。いかに切り替えるかでしょうね」

最も重圧のかかる場面は牧田が最も輝ける場所

 今回の侍ジャパンが結集された当初、牧田は第二先発を任されると見られていた。牧田自身も起用法について、「任されたらどこでもいける便利屋みたいな感じ」と想定していた。
 しかし、浅尾拓也(中日)が右肩痛で落選し、最もプレッシャーのかかる場面での登板が予想される。同時にそのマウンドは、牧田が最も輝ける場所でもある。
「(大学2年以来の)日の丸は非常に重いですけど、深く考えすぎず、自分のパフォーマンスを出せればいい。もちろん3連覇が目標だけど、目先の1試合をしっかりやって、3連覇できれば」

 WBCの舞台でも、牧田が心掛けるのはいつも通りの投球だ。世界の猛者を封じ込めたとき、右腕は再びこう口にするだろう。
「自分のピッチングをすれば、抑えられる自信がありました」
 常に威風堂々とするサブマリンが、3連覇へのカギを握る。

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著者プロフィール

1979年埼玉県生まれ。上智大学在学中からスポーツライター、編集者として活動。05年夏、セルティックの中村俊輔を追い掛けてスコットランドに渡り、4年間密着取材。帰国後は主に野球を取材。新著に『プロ野球 FA宣言の闇』。2013年から中南米野球の取材を行い、2017年に上梓した『中南米野球はなぜ強いのか』(ともに亜紀書房)がミズノスポーツライター賞の優秀賞。その他の著書に『野球消滅』(新潮新書)と『人を育てる名監督の教え』(双葉社)がある。

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