中部電力だけじゃない、“カー娘”の熱き戦い=群雄割拠の女子カーリング
中部電力3連覇も…ライバル接近
日本選手権3連覇を果たした女王・中部電力。だが、市川主将(中央)をはじめ選手たちはこれまでにない脅威を感じていた 【Getty Images】
女子アナからの「(日本代表の)中部電力はスイープが強みだそうですが、札幌国際大さんの強みは何ですか?」との質問に対し、札幌国際大のスキップ吉村紗也香が、こう答えて声に力を込めた。
意地を示したこの言葉が、日本女子カーリング界に群雄割拠の兆しが生まれていることの象徴のように響いた。
世界選手権(3月、ラトビア・リガ)代表選考会を兼ねて、2月12日から17日まで、札幌市どうぎんカーリングスタジアムで行われた日本選手権。女王の中部電力が3連覇を果たしたが、昨年とは少し状況が違っていた。2大会連続五輪出場のチーム青森は精彩を欠いて予選敗退したものの、予選を1位通過した準優勝の北海道銀行、3位に入った札幌国際大、4位ロコ・ソラーレ(LS)北見が昨季よりワンランク上のプレーを披露。予選で北海道銀行が女王に苦杯をなめさせるなど、中部電力にライバルの包囲網がにじり寄った大会だったのだ。
中部電力もこれまでになかった脅威を警戒していた。サードの市川美余主将は「今まで戦った日本選手権の中で一番厳しい」と言った。
ワンランク上とは、世界の進化に向き合い、攻撃的なプレースタイルを模索するということ。攻撃的とはハウスと呼ばれる標的の中にストーンを多く残すハイリスクハイリターンの展開の中で、時にウエート(ストーンの速さ)の微妙なさじ加減をする弱いドローショット(このとき強力なスイープ力が重要となる)を、時に複数のストーンを一気にはじき出す強いテイクショットを繰り出すスタイルのことだ。
予選で女王を破った北海道銀行
だが、今季は昨秋のカナダ遠征や札幌に完成した通年型ホールで多く氷に乗ることができた。元祖“カー娘”の小笠原歩と船山弓枝にとってはトリノ五輪当時から旧知の仲であるフジ・ロイ・ミキ氏をコーチに招へいし、一歩踏み込んだ攻撃的な戦術への脱皮を図っている。
予選で中部電力に勝った試合で、その様子が垣間見えた。中部電力のミスが目立ったものの、そこには北海道銀行の攻めの姿勢に焦った側面があった。例えば、北海道銀行は7エンドにセカンドの小野寺佳歩のナイスショットなどでゲームを作った後、スキップ小笠原が2個同時にストーンをはじき出すダブルテイクと、相手ストーンをテイクして自分は残るヒット&ロールを連発し4点を獲得。相手のギブアップを引き出した。
船山は「やるからには五輪をしっかり自分でとらえていますし、残り少ない可能性を100%に近づけるようにしていきます」と、世界選手権後の9月に行われる代表決定戦に決意をにじませている。
札幌国際大、LS北見にも可能性
そして、もう1つ。小林博文コーチが打ち明ける。「前回の世界ジュニアが終わった昨季後半から新たな戦術を学んでいるんです。集めるゲームでどう石を配置して最後はどうするという、先手を読む展開です」。
完成度を上げる過程にあった今大会ではほころびが出てしまった。それだけに間もなく五輪の地、ロシアのソチで始まる世界ジュニアでの戦いぶりが注目される。
LS北見は時折ミスがあり、最後に力尽きた格好だが、今大会に向けて、標的の石にぴったりくっつけるフリーズなど、細かなウエート調節が必要なショットを鍛えてきた。“マリリン”こと本橋麻里を中心とした奔放なカーリングが次はどう発展していくのか。底知れぬ可能性の一端は示してくれた。