中部電力だけじゃない、“カー娘”の熱き戦い=群雄割拠の女子カーリング

高野祐太

ローカルスポーツが描く新たな将来像

“マリリン”こと本橋麻里を擁するLS北見は4位に終わったが、彼女たちの活躍が日本女子カーリング界の活性化につながっている 【Getty Images】

 絶対女王だけではない、いつでも代表が取って代わられるという状況は、日本のレベルを必ずや引き上げてくれる。日本選手権に出場できなかった中にも埋もれた強いチームはいくつもあるのだ。その1つ、日本選手権の中部地区予選で中部電力に2回1点差のクロスゲームを繰り広げた準優勝の城西大のメンバーがある思いで今大会を眺めていた。「この場に立っていれば良い試合ができたのにと悔しい思いでした。ソチ五輪には行けないけど、ドローショットを武器に、次の大会で中部電力などを破りたい」。スキップの土屋海が全員の胸の内を代弁した。

 日本カーリング協会では、それらのチームを拾い上げる大会システムを構想している。1つの案としては、代表決定戦につながる全国規模のリーグ戦やトーナメント戦を行い、日本選手権に出場できなかったチームにも代表のチャンスを作るというようなものだ。

 そのように多くの試合を行うには、会場となるホールが必要だが、状況は好転している。通年型ホールが昨年の札幌に続き、今年3月に軽井沢、11月に北見市常呂町(ところちょう)で運用を開始する予定といい、ほかにも盛岡市、新潟市でも動きがある。競技環境が向上し、カーリング熱が高まることで、新たな人材が参入してくることも期待できる。北海道の旧常呂町や長野県の軽井沢町などでローカルスポーツとして発展してきた日本カーリングが、新たな将来像を描こうとしている。それこそが競技力向上につながっていくはずだ。

世界選手権でソチ五輪出場権の獲得なるか

 翻って、今、成し遂げるべきは、まだ手にしていないソチ五輪出場権の獲得だ。昨季の日本女子は代表だった中部電力がソチ五輪出場権を懸けたポイントレースでもある世界選手権出場を逃しており、大舞台までの道のりが険しくなっているのは事実。だが、今大会のし烈な争いを見ていると、可能性は十分と思えてくる。

 中部電力が激戦を制し、日本ナンバーワンの座に揺ぎはないことを示した価値は大きい。その戦いぶりは、ソチ五輪切符を狙いにいく世界選手権代表としてふさわしい内容だった。ここぞで決めるショットの安定感、決定力、攻撃的戦術、それを支えるスイープ力などのフィジカル面。昨年から打ち出している“マンリーカーリング”(男気のあるカーリング)を存分に発揮していた。

 世界選手権で4位以上ならそのままソチ五輪を決められる可能性が高いという。上位を逃しても最終予選のチャンスはあるが、3月に一発で決める大逆転劇も十分にアリだ。スキップの藤沢五月は「4位以内を目指し、パシフィック・アジア選手権で負けている中国にリベンジしたい」と、最短プランにまい進する意欲をたぎらせている。

<了>

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著者プロフィール

1969年北海道生まれ。業界紙記者などを経てフリーライター。ノンジャンルのテーマに当たっている。スポーツでは陸上競技やテニスなど一般スポーツを中心に取材し、五輪は北京大会から。著書に、『カーリングガールズ―2010年バンクーバーへ、新生チーム青森の第一歩―』(エムジーコーポレーション)、『〈10秒00の壁〉を破れ!陸上男子100m 若きアスリートたちの挑戦(世の中への扉)』(講談社)。

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