アヤックスが目指す伝説の再現=ベスト32で見せた“ELへの本気”

中田徹

大観衆で埋まったアムステルダム・アレーナ

欧州リーグ第1戦を先勝し、喜ぶアヤックスのイレブン 【Getty Images】

 サッカーの欧州リーグ(EL)決勝トーナメント1回戦の第1戦が14日に行われ、ステアウア・ブカレスト(ルーマニア)を2−0と破ったアヤックス(オランダ)は、“ELへの本気”を見せた。トーナメントはまだ、ベスト32。ビッグマッチとは言い難い舞台だ。それでもアムステルダム・アレーナは5万1493人の大観衆で埋まった。

 選手起用に関しても、フランク・デ・ブール監督は負傷明けのシグトルソンとクエンカを抜擢(ばってき)し、チームが本気で戦う姿勢を見せた。最近、復帰したばかりのこの2人がステアウア・ブカレスト相手に先発しても、65分ほどの出場時間に限定されている上、週末のRKC戦出場は不可能になる。それでも指揮官は「リスクを冒しても2人を先発させたい」とピッチに送り出した。

 この大会のグループリーグでは、オランダのトップクラブ、PSVとトゥエンテがメンバーを温存して戦い、ベスト32進出に失敗。両チームのアドフォカート監督とマクラーレン監督は大きな批判を浴びた。

 アヤックスにとっては、欧州チャンピオンズリーグ(CL)の“死の組”でマンチェスター・シティと競り合い、苦労の末に勝ち取ったELの決勝トーナメント進出だった(※CLのグループリーグ3位チームはELの決勝トーナメント出場権を得る)。しかも、今大会の決勝戦は地元アムステルダム・アレーナで開催される。11年前、ライバルのフェイエノールトがレンジャーズ、PSV、インテルという強豪を破って、地元ロッテルダムでの決勝戦でボルシア・ドルトムント相手に優勝を決めたのは、オランダでは伝説となっている。アヤックスが今回のELで描くのも、フェイエノールトが果たした成功の歴史と同じものだ。

地元開催の決勝戦進出を夢見るアヤックス

 ステアウア・ブカレスト相手に、アヤックスはGKからしっかりとつなぐサッカーを披露し、2人のDF、アルデルワイレルト、ファン・ラインのゴールによって快勝した。アヤックスがゴールを決めるごとに、そして観戦に訪れたクライフがビッグスクリーンに映るとサポーターが飛び跳ね、スタジアムは文字通り揺れた。

 ルーマニアの名門、ステアウア・ブカレストもリターンマッチを見越して、最後までアウエーでのゴールを目指し続けた。「さすがはルーマニアリーグで、2位に勝ち点10差をつけて首位を走っているチームだけあった。ステアウア・ブカレストはとても良いチームだった」(試合後のデ・ブール監督)
 
 おそらくイングランドの記者からか、「ブカレストのナショナル・アレーナとロンドンのスタンフォード・ブリッジではどちらがやりにくそう?」という質問が試合後にアヤックスの指揮官に飛んだ。

「まずはブカレスト。彼らのサポーターは熱狂的で、チームをフルに応援する」とデ・ブール監督は答えをはぐらかせた。ブカレストでステアウアは猛攻を仕掛けてくるだろう。それをしのいだ先にスパルタ・プラハとチェルシーの勝者との戦いがある。

 オランダのチームはゼロトップを採用することによって、イングランドのセンターバックを無力化することに成功し、試合を優位に進めることがある。しかもアヤックスはELに対して本気で取り組んでいる。ELは日程的にとてもタフな大会で、しかも金銭的な見返りは少ないが、彼らは決勝戦のアムステルダム・アレーナの舞台を夢見てチャレンジしている。

<了>
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著者プロフィール

1966年生まれ。転勤族だったため、住む先々の土地でサッカーを楽しむことが基本姿勢。86年ワールドカップ(W杯)メキシコ大会を23試合観戦したことでサッカー観を養い、市井(しせい)の立場から“日常の中のサッカー”を語り続けている。W杯やユーロ(欧州選手権)をはじめオランダリーグ、ベルギーリーグ、ドイツ・ブンデスリーガなどを現地取材、リポートしている

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