川内優輝が勝ち続ける4つの要因

加藤康博

新たに手に入れた、レース後半の“攻め”

 もちろん走力のアップも大きい。川内は昨年9月に練習の一環で出場した1500メートルの記録会で3分50秒51と、それまでの自己ベストを6秒以上更新した。記録だけを見れば特筆すべきものではないが、もともと40キロからの粘りに定評のある選手。その力がさらに伸びたことで、他の選手は「ラスト勝負には持ち込めない」というプレッシャーに晒される。
 加えてこの別大では、新たに30キロからの攻めの姿勢を貫いた。ロンドン五輪マラソン6位の中本健太郎(安川電機)相手に仕掛けること実に5回。急激なペースアップを自ら作り出せるタフさを見せた。「40キロ以降の粘り」だけでなく「30キロからの攻め」も手にしたのであれば、他の日本人選手がつけ入るのはさらに難しくなったと言っていい。

「テグでは対応できなかったが、自分から仕掛ける力を磨けば、外国人選手の揺さぶりにもついていけるはず。今後も実戦でこの技術と経験を磨いていきたい」
 川内は別大後、そう語った。世界選手権代表の座はまだその手にないが、本人は以後の選考レースに出る予定はなく、3月17日のソウル国際マラソンを視野に入れる。昨年の優勝タイムは2時間5分台だったレースで、2時間7分台を狙うつもりだ。
 今後、彼が世界基準の高速レースへの順応性を手にすることになれば、その強さはさらに増すだろう。川内の進化はまだまだ続きそうだ。

<了>
<川内優輝 世界選手権テグ大会以降の全14レース戦歴>
11年9月 世界選手権テグ大会 18位 
11年10月 大阪マラソン 4位
11年12月 福岡国際マラソン 3位
11年12月 防府読売マラソン 2位
12年2月 東京マラソン2012 14位
12年4月 かすみがうらマラソン 優勝
12年4月 デュッセルドルフマラソン 8位
12年7月 ゴールドコーストマラソン 4位
12年8月 北海道マラソン 優勝
12年9月 シドニーマラソン 優勝
12年10月 ちばアクアラインマラソン 優勝
12年12月 福岡国際マラソン 6位
12年12月 防府読売マラソン 優勝
13年1月 エジプト国際マラソン 優勝
13年2月 別府大分毎日マラソン 優勝

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著者プロフィール

スポーツライター。「スポーツの周辺にある物事や人」までを執筆対象としている。コピーライターとして広告作成やブランディングも手がける。著書に『消えたダービーマッチ』(コスミック出版)

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