史上初の夢の舞台に挑む鵬翔の強み=攻守に粘り強さを発揮する“和”の力
特別な“個”に頼らない連携
特定の個に頼らず、試合ごとに攻撃の連携を深めていった鵬翔。SBの柏田(左)は攻守に活躍を見せた 【写真は共同】
小原、東聖二、川崎皓章の攻撃的MF陣は攻守に忠実で、前線からボールを追い、カウンターの機会をうかがっている。単に足を動かすのでなく、連動したしつこいチェイシングが強みだ。“良い守備が良い攻撃につながる”という金言を実行しているのが彼らで、ロングボールを蹴っても、セカンドボールを確保できている。選手同士の距離を近づけて、少ないタッチでテンポよくボールを動かすパスワークも、一つの形だ。鵬翔は2トップや両SBが中盤をフォローし、パス回しの基本である“トライアングル”を小まめに作る。そんな“受け手”の動きは鵬翔の特長だ。セットプレーの充実もあり、特別な才能、戦術がなくとも、その攻撃は十分に機能している。鵬翔は当たり前のことを当たり前に実行することで、“当たり前ではない”結果を出しつつある。
大輪の花を咲かせつつある一期生
「コツコツ一生懸命、真面目に頑張ろう」。松崎監督が選手に伝えているという、チームの信条だ。松崎監督のコメントは丁寧で、相手はもちろん、自分たちの選手を決して悪く言わない。愛情と安心感がにじみ出る、62歳の今大会最年長指導者だ。鵬翔の粘り強さを生み出しているのは監督の経験やキャラクターであり、さらにいえば選手の“和”だろう。「みんな仲が良くて、声かけもできている」(柏田)という守備陣は、GK浅田、CB原田、CB芳川、左SB日高、ボランチ矢野とセントラルFC宮崎の出身者が並ぶ。中高6年間の“一貫教育”が、体力や技術面のみならず、連携や人間関係の構築に大きく寄与している。付属中からの強化を進める日章学園、宮崎日大に対抗して立ち上げた“鵬翔U−15(セントラルFC宮崎が相当)”から育った一期生が、高校の最終学年を迎えて大輪の花を咲かせつつある。
「神懸り的な部分がありますね」。松崎監督が2回戦の後に漏らした言葉である。しかし鵬翔は3回戦、準々決勝を紛れもない実力で勝ち切った。もし神懸りがあるとすれば、この結果以上に、短期間で彼らの見せた成長のことだろう。
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