史上初の夢の舞台に挑む鵬翔の強み=攻守に粘り強さを発揮する“和”の力

大島和人

特別な“個”に頼らない連携

特定の個に頼らず、試合ごとに攻撃の連携を深めていった鵬翔。SBの柏田(左)は攻守に活躍を見せた 【写真は共同】

 3回戦、準々決勝の3得点は、“ゴールがゴールを呼ぶ”という精神的な好循環もあったろう。とはいえ試合を経るに従って、チームとしての機能性が見えてきた。鵬翔の攻撃陣には特別な“個”が見当たらず、中濱もまだ完全でない。しかし前線のバランス、連携に大きな強みがある。2トップは大型FW澤中拓也が、縦パスの受け手として攻撃のテンポを作る。1年生FWの北村知也は細かいステップからの仕掛けが秀逸で、突破はもちろん、味方が攻め上がる時間を作れるタイプだ。「小さいのがチョロチョロしますので、(澤中と)いいコンビ」(松崎監督)という絶妙な組み合わせだ。

 小原、東聖二、川崎皓章の攻撃的MF陣は攻守に忠実で、前線からボールを追い、カウンターの機会をうかがっている。単に足を動かすのでなく、連動したしつこいチェイシングが強みだ。“良い守備が良い攻撃につながる”という金言を実行しているのが彼らで、ロングボールを蹴っても、セカンドボールを確保できている。選手同士の距離を近づけて、少ないタッチでテンポよくボールを動かすパスワークも、一つの形だ。鵬翔は2トップや両SBが中盤をフォローし、パス回しの基本である“トライアングル”を小まめに作る。そんな“受け手”の動きは鵬翔の特長だ。セットプレーの充実もあり、特別な才能、戦術がなくとも、その攻撃は十分に機能している。鵬翔は当たり前のことを当たり前に実行することで、“当たり前ではない”結果を出しつつある。

大輪の花を咲かせつつある一期生

 松崎監督こそ「今は走ってないですね」と謙遜するが、キャプテンの矢野は「昔の鵬翔に比べれば走ってないと思うけれど、夏合宿ではしっかり走りました。なのでこの結果が付いてきている」と誇る。立ち上がりに押されていても、流れを取り戻すゲームフィットネスも、試合を経るごとに際立っている。 

「コツコツ一生懸命、真面目に頑張ろう」。松崎監督が選手に伝えているという、チームの信条だ。松崎監督のコメントは丁寧で、相手はもちろん、自分たちの選手を決して悪く言わない。愛情と安心感がにじみ出る、62歳の今大会最年長指導者だ。鵬翔の粘り強さを生み出しているのは監督の経験やキャラクターであり、さらにいえば選手の“和”だろう。「みんな仲が良くて、声かけもできている」(柏田)という守備陣は、GK浅田、CB原田、CB芳川、左SB日高、ボランチ矢野とセントラルFC宮崎の出身者が並ぶ。中高6年間の“一貫教育”が、体力や技術面のみならず、連携や人間関係の構築に大きく寄与している。付属中からの強化を進める日章学園、宮崎日大に対抗して立ち上げた“鵬翔U−15(セントラルFC宮崎が相当)”から育った一期生が、高校の最終学年を迎えて大輪の花を咲かせつつある。 

「神懸り的な部分がありますね」。松崎監督が2回戦の後に漏らした言葉である。しかし鵬翔は3回戦、準々決勝を紛れもない実力で勝ち切った。もし神懸りがあるとすれば、この結果以上に、短期間で彼らの見せた成長のことだろう。

<了>

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著者プロフィール

1976年生まれ。生まれが横浜で育ちは埼玉。現在は東京都(神奈川県に非ず)町田市に在住している。サッカーは親にやらされたが好きになれず、Jリーグ開幕後に観戦者として魅力へ目覚めた。学生時代は渋谷の某放送局で海外スポーツのリサーチを担当し、留年するほどのめり込む。卒業後は堅気転向を志して某外資系損保などに勤務するも足を洗いきれず、2010年より球技ライターとしてメジャー活動を開始。

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