全日本フィギュアに潜んでいた2つの魔物 「史上最も過酷な国内戦」が示す層の厚さ

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選手たちの感覚を微妙に狂わせたもの

3位に食い込んだ小塚「本当にこの大会は厳しい」 【坂本清】

 またSPでは、羽生と4位につけた無良以外、有力選手に大なり小なりのミスが目立った。2位の高橋は前述の通りで、3位の小塚は冒頭の4回転でステップアウト。前日練習で好調さをアピールしていた5位の織田も同じく4回転で転倒し、今季躍進が著しい町田に至っては、2つのジャンプを失敗し、8位に沈んだ。

「ちょっと気を許せばそこに魔物がすっと入ってくる。本当にこの大会は厳しいです」(小塚)

「朝から緊張してしまって、直前の練習でもうまく跳ぼうという気ばかりが焦って、調子が上がりませんでした。ショートでミスしてしまうと、ほかの人と差が開いてしまうというプレッシャーは多少ありました」(織田)

織田は4位とやや差がついての5位。フリーでの巻き返しを狙う 【坂本清】

 納得の演技を披露した無良でさえ、「全日本選手権の雰囲気は一番苦手です。今回は特にトップクラスの選手が多くて、いつもと違うピリピリ感がありました」と語っている。歴史ある大会の独特の雰囲気に加え、かつてなかったハイレベルな争いによるプレッシャー。この2つの“魔物”が選手たちの感覚を微妙に狂わせたのかもしれない。

 そう考えると22日に行われるフリーの行方もまだ分からない。羽生はスタミナ面に課題を残しており、GPファイナル後に体調を崩したこともあって、自身も「今日は少し不安だった」と明かしている。事実、スケートアメリカでは小塚にSPでつけた10点近い差をフリーで逆転された。経験豊富な高橋が追う展開とあって、同様のことが起こらないとは言い切れない。高橋が予定されている2つの4回転ジャンプを決め、羽生が全日本の魔物の手に落ちたら……。まだまだ先の読めない展開は続きそうだ。

<了>

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