試練を乗り越えたベッテルが3連覇を達成=可夢偉、ザウバー最後のレースで9位入賞
ベッテルが底力を発揮
史上3人目となる3連覇を達成したベッテル 【Getty Images】
アロンソより前の4番手からスタートしたベッテルだったが、直後の混乱に巻き込まれスピン。なんと1周目から最後尾に後退してしまう。一方、表彰台圏内でのフィニッシュが必須のアロンソは好ダッシュで3位浮上。いきなり逆転チャンピオンの条件がそろい、誰もがアロンソ絶対有利と確信した。しかし、ここから現王者ベッテルが底力を発揮した。
インテルラゴスはコース幅が狭く、いくらマシンの性能差があっても簡単に前のマシンを追い抜くことはできない。それでも3連覇へ何が何でも前に行かなければいけないベッテルは次々とパスしていき、9周目にはなんと6位までばん回。ポイント圏内に戻ってきたことにより、逆にアロンソは表彰台だけではなく優勝しなければならなくなった。
しかし、雨が降ったり止んだりと目まぐるしくコンディションが変わる難しいレースの中、少雨用のインターミディエイトタイヤに交換するなど、天候に翻ろうされてしまい、なかなか前に追いつくことができない。途中、セーフティカー導入やトップを走っていたルイス・ハミルトン(マクラーレン)がアクシデントに巻き込まれリタイヤするなど、幾つかの場面でチャンスがあったものの、荒れたレースに強いバトンを攻略することができず2位でチェッカー。
ベッテルは序盤でのばん回以降は着実に周回を重ね、6位でフィニッシュした。これでベッテルが281ポイント、アロンソが278ポイントとなり、わずか3ポイント差でベッテルが2012年のドライバーズチャンピオンを獲得。ファン・マヌエル・ファンジオ、ミハエル・シューマッハに続く史上3人目の3連覇を達成した。
昨年の圧倒的な強さとは異なり、今年は最終戦までもつれ込み、強敵アロンソと1ポイントをめぐる攻防戦を繰り広げたベッテル。パルクフェルメに戻りマシンを降りると、拳を突き上げて喜びを爆発させた。これまでの2回とはまた違う“価値ある”チャンピオンを獲得した瞬間だった。
雨に強いバトンが今季3勝目
2番手からスタートすると、8周目に僚友のハミルトンをかわしてトップに浮上。この直後に雨が強くなり始め、少雨用のインターミディエイトタイヤを求めて各車ピットインを始める。しかし、バトンはここでインターミディエイトに履き替えても、雨が弱まればドライタイヤを求めてもう一度ピットインしなければいけないというリスクも考え、チームともう少し様子を見るという判断を下した。これが見事に的中し、数週で雨脚は落ち着き、大半は再びドライタイヤへの交換のためピットへ。バトンは序盤から40秒以上の大量リードを築くことになった。
その後、同じ戦略でコースに留まったニコ・ヒュルケンベルグ(フォースインディア)にかわされ、さらにセーフティカーの導入で序盤のリードが帳消しになった影響により、ハミルトンにも抜かれ、3位に後退する。劣勢に立たされてしまったバトンだが、冷静に次のチャンスが来るのを待ち続けると、再び雨が強くなり始めた55周目にヒュルケンベルグとハミルトンが接触。このすきに再びトップに浮上し、そのままチェッカーを受けた。
2010年にマクラーレンに移籍して以降、優勝した7回のうち4回は雨絡みのレース。今回も、チームと連携して難しい状況下で、正しい判断を導き出してつかんだ勝利だった。
ザウバーとの契約終了、来季の去就は未定
これでトータル60ポイントを獲得し、ランキング12位で終えた可夢偉。終盤戦で常に目標としていたメルセデスAMGをコンストラクターズ(チーム)ランキングで逆転することはできなかったが、最後はきっちりポイントを獲得して今シーズンを締めくくった。
「難しい1年だったが、すごく自分のためになったシーズンだった」と、可夢偉は今シーズンを振り返った。不運なレースやうまくいかないこともあり、時には厳しい批判も受けてきた。それでも第12戦ベルギーGPで予選2位、第15戦日本GPでは3位表彰台と今まで以上に上位に顔を出す瞬間も多く「可夢偉ここにあり!」というシーンも少なくなかった。
残念ながらザウバーとの契約終了に伴い、来季の去就については未定。シート獲得については楽観視できる状態にないが、一日でも早く良い知らせが飛び込んでくることを願いたい。
<了>
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