インドネシア武術「シラット」の実体、いざ突撃取材=「帰ってきたシネマ地獄拳」第6回

しべ超二

単純な打撃だけでない複合技でも独自の技術が展開

【写真4】相手をひねって倒し、立ったまま相手の肘を腕十字の要領で極めている 【しべ超二】

 さらに稽古を見学すると、単純な打撃だけでない複合技=シラット独自の技術が展開されていく。

 合気道もしくは逮捕術のように相手の手首をひねって倒し、鉄槌(てっつい)or踏みつけで決めの一撃。あるいは、やはり相手の手首をひねって倒し、立ったまま相手の肘を腕十字の要領で極めて制する技【写真4】なども。
 相手の回し蹴りに合わせて懐へ飛び込み、蹴り足をすくってそのまま転倒させる技(※相手が右ミドルを蹴ってきたら、自分は左斜め前にステップして蹴りの威力を弱めつつ、手で相手の右足をすくう)は、外国人初のムエタイ王者・藤原敏男会長の技術と同じものであった。

 また、地面の相手に“決め”を入れた後、周囲の敵を想定しているのか前方回転受け身のように素早く飛んでその場を離れたり、できるだけ立った状態をキープして周囲に気を払うなど、常に多数の相手と戦うことを前提として技術体系が作られているよう思われた。なるほど、そうであればこそ「敵多すぎ!」な状況においても、無類の強さを発揮した『ザ・レイド』の主人公にリアリティーが感じられる。

映画も格闘技も、やはり人を魅了する“何か”がなくては

 この日初めて目の当たりにしたプンチャック・シラットは、『ザ・レイド』での印象同様、直線的な突き・蹴りだけでなく、様々な部位を使った打撃&円の受けなど、どこかカンフーを思わせる動きも多かった。オリエンタルであり、ミステリアスなよさ。
 それはかつて、『蛇拳』『酔拳』といったジャッキー・チェンの「拳シリーズ」に受けた憧憬と近いものに感じたりもした。戦いであり、ファンタジックでアメージング。
 映画も格闘技も、やはり人を魅了する“何か”がなくてはならない。シラットを見てそんなことが思われた。


取材協力=日本プンチャック・シラット協会 目黒支部(http://japsameguro.gozaru.jp/indexJ.html)、早田恭子(目黒支部世話人)

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著者プロフィール

映画ライター。ペンネームは『シベリア超特急2』に由来し、生前マイク水野監督に「どんどんやってください」と認可されたため一応公認。松濤館空手8級。

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