白熱のチャンピオン争いで存在感放つライコネン=F1

田口朋典

確実にポイントを積み上げるライコネン

着実にポイントを積み上げ、ランキング3位につけるライコネン。得意の鈴鹿で今季初優勝なるか 【Getty Images】

 だがここでもうひとり、筆者が注目したいのがランキング3位につけるキミ・ライコネン(ロータス)だ。

 2009年にフェラーリをドライブした後、F1を離れWRC(世界ラリー選手権)やNASCARなどに参戦していたライコネンは、今季2年間のブランクを経て、ロータスからF1に復帰することとなった。当初はややそのパフォーマンスに陰りを感じさせるミハエル・シューマッハ(メルセデスAMG)のように、彼本来の走りが見られないのではないかとの憶測もあった。しかし、フタを開けてみれば第3戦中国GPの14位を除けば、ここまで優勝こそないもののポイント獲得を継続。速さはあるものの、やや信頼性と安定感に欠けるロータスのマシンを駆って積み重ねた149ポイントは、ハミルトンを7ポイント上回っての堂々のランキング3位。開幕前の周囲からの不安を払拭したことはいうまでもなく、元王者にふさわしい“さすが”の戦いを続けている。

 タイトル争いの上では、前述したようにアロンソの優位は動かない。しかし、終盤戦の要所ともいうべき日本GPについては、ライコネンが不気味な存在だ。ザウバー時代の01年のリタイア以外、マクラーレン、フェラーリで戦った鈴鹿では8レースしてポイントを逃したことがなく、5回の表彰台。05年には突然の雨で予選17番手に沈むも、決勝では怒とうの追い上げを見せ、最終ラップにジャンカルロ・フィジケラ(当時ルノー)をかわして優勝を飾るなど、こちらも鈴鹿を得意としているのだ。

 コース適応などがやや不安定ではあるが、これまでのキャリアで最もスピードのあるザウバーC31を得て、ホームグランプリに挑む小林可夢偉の健闘を願うのはもちろんだが、今回の鈴鹿では久しぶりに日本のファンの前に戻って来る“アイスマン”に大いに期待したい。

残り6戦、大逆転劇は起きるのか

 最大26ポイント差を跳ね返し、ライコネンが最終戦で大逆転のタイトル獲得を果たしたのは07年。あれから5年、現時点でフェラーリ最後のドライバーズチャンピオンであるライコネンが、自身と入れ替わる形でフェラーリに加入したアロンソのフェラーリでの初のタイトルに挑むことになるかもしれない。

 ちなみに、両者のここまでの最大差は、第10戦ドイツGP終了時点の56ポイント(現在は47ポイント差)。当時とはポイントシステムこそ違えど、“予測不能”、“カオス”と称された不安定なシーズンの終わりが、5年前を上回る大逆転劇となっても驚きはしないだろう。
 今季F1も残るは6戦。そのドラマの序章が来週末の鈴鹿サーキットで見られるかもしれない。

<了>

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著者プロフィール

1966年生まれ。大学卒業後、趣味で始めたレーシングカートにハマり、気がつけば「レーシングオン」誌を発行していたニューズ出版に転職。隔週刊時代のレーシングオン誌編集部時代にF1、ル・マン、各種ツーリングカーやフォーミュラレースを精力的に取材。2002年からはフリーとなり、国内外の4輪モータースポーツを眺めつつ、現在はレーシングオン誌、オートスポーツ誌、CG誌等に執筆中。自身のブログ“From the Paddock”(スポーツナビ+ブログで)では、モータースポーツ界の裏話などを披露している

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