大苦戦の週末を過ごした可夢偉=F1 「次の鈴鹿では残念な結果にならないように」

吉田知弘

約4年ぶりに2時間ルールが適用されたシンガポールGP

不運なアクシデントもあり、13位に終わった可夢偉。大苦戦の週末となってしまった 【Getty Images】

 2012年のF1世界選手権第14戦シンガポールGPの決勝は、3番手スタートのセバスチャン・ベッテル(レッドブル)が今季2勝目を飾った。

 当初61周で争われるはずだったシンガポールGPだが、途中コース上でのクラッシュがあり、2度に渡ってセーフティカーが導入。これにより61周を消化する前に、規定で定められている2時間を迎えたため、59周でチェッカーフラッグが出されてレースが終了となった。

 この2時間ルールの適用は08年モナコGP以来、およそ4年ぶりの出来事だ。しかしファンの皆様にとっては「最大延長時間は4時間だったのでは?」と疑問に思われている方も多いと思う。

 現在のF1スポーティング・レギュレーション(競技規定)第5条3項によると「スタートから2時間を超えた場合、規定周回数を消化していなくてもチェッカーを提示する」という項目がある。しかし今年の第2戦マレーシアGPでは、途中の豪雨で赤旗中断。その後レースは再開されて規定周回数を走り切ってフェルナンド・アロンソ(フェラーリ)が優勝した。この時のレースタイムを見ると2時間44分51秒と、規定の2時間をオーバーしている。

 なぜこのような事が起こったのか? そのポイントは「赤旗」にある。

 前述の第5条3項には続きがあり「赤旗を提示してレースを中断した場合は、規定時間を4時間に延長する」という項目が追加されている。マレーシアGPの場合は赤旗によりレースを完全に中断したのに対し、今回のシンガポールGPではセーフティーカーによる安全確保の隊列走行を行っただけで、レースは進んでいる状態だったのだ。これにより、今回は2時間ルールが適用されることとなった。

 08年の初開催以降、照明に照らされたF1マシンが夜の街を疾走するレースとしてシリーズを通しても人気の高い1戦となったシンガポールGP。しかしコースレイアウトの関係上、305キロ以上を走破するために必要な61周を消化すると、毎年のように2時間に近いレースが続いてきた。来年以降、コースレイアウトの変更やモナコGPのように特例でのレース距離変更など、何かしらの対策が講じられるかもしれない。

不運なアクシデントもあり、13位に終わる

 日本GPを直前に控え、ここで弾みをつけたい小林可夢偉(ザウバー)だったが、ザウバーチームにとっても苦手意識の強いシンガポールGPで大苦戦の週末となってしまった。

 ここ数戦はQ3に進出するなど絶好調だった公式予選も18位でQ1ノックアウトとなり、久しぶりに後方からのレースを余儀なくされてしまった。決勝では硬い方のタイヤとなるソフトタイヤを選択。燃料が少なくなってタイヤへの負担も減るレース終盤に消耗の早いスーパーソフトタイヤを選ぶ戦略で臨んだ。

 序盤からタイヤの温存を意識しながらのドライビングを徹底し、我慢強く周回を重ねた。後半の41周目には11位に浮上し、ポイント圏内目前まで挽回(ばんかい)してきた。しかし50周目に、後方から迫ってきたマーク・ウェバー(レッドブル)にパスされたすきを突いて抜きにかかってきたニコ・ヒュルケンベルグ(フォースインディア)と接触。可夢偉はフロントウイングを破損し、緊急ピットインを余儀なくされる。またしても不運なアクシデントに見舞われ、17位まで後退してしまったが、同時に新品のスーパーソフトタイヤに履き替えて挽回を開始。最終的に13位まで順位を取り戻してチェッカーを受けた。

 レース後、チームが公式配信している動画インタビューに登場した可夢偉は「今回は全体的にペースが悪かった。残念な結果だけど、次の鈴鹿ではもっといい順位でレースがしたいし、残念で終わらないようにしたい」と、すでに気持ちを切り替えて来週の母国レースに向けて集中している様子だった。

 次回はいよいよ日本GP。シリーズ屈指の難コースである鈴鹿サーキットはザウバーのマシンにとって相性の良いコースであり、チームも可夢偉自身も開幕当初から一番狙っていたレースでもある。

 毎年、鈴鹿サーキットに駆けつけた多くのファンの期待とパワーを受け止め、しっかりと形に変えてきた。可夢偉ファンの皆さんはサーキットの観戦スタンドから、ご自宅のテレビから、彼に大きなパワーを送って母国凱旋(がいせん)レースを支えていただきたい。

<了>
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著者プロフィール

1984年生まれ。幼少の頃から父の影響でF1に興味を持ち、モータースポーツの魅力を1人でも多くの人に伝えるべく、大学卒業後から本格的に取材・執筆を開始。現在では国内のSUPER GT、スーパーフォーミュラを中心に年間20戦以上を現地で取材し、主にWebメディアにニュース記事やインタビュー記事、コラム等を掲載。日本モータースポーツ記者会会員

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