2014年世界選手権出場へ見えた成果と課題=バスケ・アジアカップ総括

小川勝

わずかな差で手が届かなかった初優勝

弟・譲次が欠場したものの、今大会チーム最長出場時間を記録し、エースとしての活躍を見せた竹内公輔(右) 【写真は共同】

 男子バスケットボールの第4回アジアカップは、22日に東京・大田区総合体育館で決勝が行われ、日本は51−53でイランに敗れ、2大会連続の準優勝となった。韓国が不参加で、中国が22歳以下の若手チームだった今回、日本は4強進出をノルマ、目標は優勝に置いて戦ったが、あと一歩で初優勝には届かなかった。

 決勝は、第4クオーター残り7秒、51−53から日本最後のオフェンスは、イランの厳しいディフェンスにあってインサイドにボールが入らず、古川孝敏(アイシン)が逆転の3点シュートを狙ったものの、決まらなかった。

 北京五輪に出場しているイランは、日本より格上の存在。今回は主力組に、10代の選手4人を含めたチーム編成だったが、やはり第4クオーターで競り合った時、大事なシュートを決められる勝負強さを見せつけた。
 試合後、日本の主将を務めた桜井良太(レバンガ北海道)の言葉が、この大会を終えた選手たちの実感を、とてもよく表していた。
 「いま出せる力は出したと思います。結果に満足しているわけではありませんが、自分がやってきた代表活動の中でも、今年は充実していたと思います。(決勝は)最終的には、フリースロー(日本は24本で成功15本だけ、イランは14本で成功10本)で差がついてしまった。でも、それも実力。来年はもっといい結果を残せるようにしたいと思います」

中国、韓国に次ぐ東アジア三番手の日本にとって重要なアジアカップ

 アジアカップは2004年に創設されて、前回大会まで「スタンコビッチ・カップ」という名称で開催されていたカップ戦だ。この大会の結果で、アジア各地区における、来年のアジア選手権への出場枠が決まる。日本にとって、これは小さからぬ問題だった。なぜなら、アジア選手権に出場しなければ、2014年世界選手権への道は開かれないし、現在では、アジア選手権への出場も、絶対確実とは言えない状況だからだ。
 バスケットボールにおけるアジアは、東アジア、中央アジア、湾岸など6つの地区に分類されていて、日本は東アジア地区に所属している。

 アジア選手権への出場で、各地区に保証されているのは2枠だけ。仮に東アジア地区が2枠のままなら、東アジア選手権で1位・中国、2位・韓国、3位・日本となった場合、日本はアジア選手権に出場できない。
 したがって、この「保証枠」以外に、アジアカップで結果を残して、東アジア地区の枠を広げておく必要があった。アジアカップの優勝国は自動的にアジア選手権への出場が決まる。さらに、2位から5位に入った国の所属地区に対して、それぞれ1枠ずつが追加で与えられるのである。

 結果的に、今回22歳以下の若手で参加した中国が5位、日本が2位になったため、枠が2つ追加され、東アジア地区の枠は「4」となった。
 東アジアでは、No.1が中国、韓国が二番手で、日本は三番手というのが現状だから、枠を広げられたことは、重要な成果だった。

諸刃の剣である桜木をどこまで期待できるか?

 では、アジアカップにおける日本代表は、どうだったのか。日本の目標は、来年のアジア選手権で3位以内に入って、世界選手権の出場権を取ること。現状は、その目標を踏まえて評価する必要がある。
 その意味では、課題と期待、両方が交錯した大会だった。

 現在、日本の世界ランキングは35位だが、予選リーグの第1戦のカタール戦、第2戦の台湾戦で勝利した時、得点、アシスト、リバウンドでチーム最多か、あるいは2番目の数字を記録したのは、10月で36歳になる桜木ジェイアール(アイシン)だった。
 現在日本代表を率いる鈴木貴美一ヘッドコーチ(HC)の下、アイシンでプレーしてきた桜木は、98−99年シーズンにグリズリーズで30試合に出場したNBA経験者だ。2007年に日本国籍を取得。今年3月、5年ぶりに鈴木HCが日本代表に復帰すると、再び代表に呼ばれた。203センチの身長で、アジアのレベルに入ると、ミドルシュートがうまいし、パスもうまい。

 だが、彼が日本バスケットボールの未来かと言えば、もちろんそういうわけにはいかない。本人も鈴木HCも、そんなことは考えていない。
 それでも、アジアカップの予選リーグの間、試合の前半で、たびたび攻撃の第1オプションは桜木だった。大会全7試合で、プレータイムも1試合平均でおよそ34分となっていて、これは竹内公輔(トヨタ自動車)に次ぐ出場時間だった。

 今回は、竹内兄弟の弟、竹内譲次(日立)がウィリアム・ジョーンズカップ(8月18日〜26日、台湾)で左足を捻挫して欠場となったため、桜木のプレータイムが長くなった面もあったに違いない。それにしても、桜木が重要な役割を果たした今回のチームを、そのまま来年以降のチームの土台と考えるわけにはいかないだろう。

 桜木はシュートとパスは素晴らしいが、案外、簡単にボールを奪われることが多く、ターンオーバーは大会7試合でチーム最多の27だった。鈴木HCが言っている「高さで不利な日本が勝っていくには、つまらないターンオーバーをしないこと」という原則から見ても、彼のプレーはもろ刃の剣(つるぎ)という面がある。今後どこまで、桜木の能力に期待するかは、鈴木HCも頭を悩ませるところだろう。

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著者プロフィール

1959年、東京生まれ。青山学院大学理工学部卒。82年、スポーツニッポン新聞社に入社。アマ野球、プロ野球、北米4大スポーツ、長野五輪などを担当。01年5月に独立してスポーツライターに。著書に「幻の東京カッブス」(毎日新聞社)、「イチローは『天才』ではない」(角川書店)、「10秒の壁」(集英社)など。

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