絶頂期を予感させる大阪桐蔭の春夏連覇=第94回夏の甲子園大会・総括

松倉雄太

奪三振記録とサードの守備機会に見る桐光学園・松井の課題

今大会最も沸かせた選手の2年生左腕・松井。来年再び甲子園に戻ってくることを誓った 【写真は共同】

 今大会を沸かせた選手の代表格が、桐光学園高の松井裕樹。1回戦で、大会最多を大きく更新する22奪三振と10者連続奪三振の華々しいピッチング。さらに2回戦で従来の記録であった19個、3回戦では12個、準々決勝は15個と全試合で2桁奪三振の離れ業を見せた。
 大会通算の奪三振は歴代3位となる68個。奪三振率は17.00で、松井より上位の三振数を誇る板東英二(徳島商高)や斎藤佑樹(早稲田実高)を大きく上回った。

 ただ、三振がクローズアップされる中で、サードの中野速人は3回戦まで一度も打球を処理する機会がなかった。さらに2回戦の常総学院高(茨城)戦のように、外野守備がやや乱れる場面もあった。これは三振を奪い過ぎることにリンクしているように思える。

 三振は取る方も、見ている方も気分が良くなるが、炎天下の中で立ちっぱなしの野手にとっては、リズムと感覚が微妙に乱れかねない。今年は3年生キャッチャーの宇川一光がしっかりリードして支えていたが、来年は松井自身がピッチングを考えていかなくてはいけない。時には、各野手が全員、打球を処理できるような組み立てをしてチームを成長させてほしい。

「野球は最後までわからない」を実践した龍谷大平安

 大会全体の平均試合時間は1時間59分で、今春の選抜大会とまったく同じ。1回戦の東海大甲府高対成立学園高(東東京)が、史上2番目の短さとなる1時間16分だったように、淡々とゲームが進んでそのまま終了するケースが多かった。
 逆に先頭打者本塁打が4本。得点が序盤に入っていた傾向を示す数字だとも言える。
 昨年は8試合あった延長戦が今年は2試合と少なかったのも、ゲーム後半の淡泊さを示している。
 9回無死走者なしからつないで追いつき、延長でサヨナラ勝ちをした龍谷大平安高(京都)のように、「野球は最後まで分からない」という意識を選手にもっと持ってほしい。

 夏が終わり、秋へ。決勝で戦った大阪桐蔭高と光星学院高以外は、すでに新しいチームが動き出している。春夏ともに記念大会となる来年。また高校生の頑張りが、日本を熱くする姿を楽しみに待ちたい。

<了>

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著者プロフィール

 1980年12月5日生まれ。小学校時代はリトルリーグでプレーしていたが、中学時代からは野球観戦に没頭。極端な言い方をすれば、野球を観戦するためならば、どこへでも行ってしまう。2004年からスポーツライターとなり、野球雑誌『ホームラン』などに寄稿している。また、2005年からはABCテレビ『速報甲子園への道』のリサーチャーとしても活動中。

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