「起こりうるすべてのことを受け入れる」
「すべてがご縁」
「不都合が人を強くする」

　これが、斎藤監督の人生哲学である。尊敬する人は、作家の神渡良平氏。講演会や勉強会に参加し、その生き方を学んでいる。神渡氏が書いた『安岡正篤　人間学』は、自身の人生を変えた１冊という。
　人はなぜ生まれてきたのか。新入部員には、「使命感」を植え付けることからスタートする。当然、勝ちたい気持ちはあるが、「高校３年間でどれだけ人間の器を大きくするか」「人として光を放つか」が、最大の目的である。その先にあるのが勝利だ。
　ひたむきな聖光学院高の野球に心動かされる高校野球ファンも多いと思うが、その理由は斎藤監督の指導方針にあるといって過言ではない。

　強豪私立にしては珍しく、中学生のスカウティングをしないのも大きな特徴だ。
「聖光学院の野球に魅力を感じてくれた選手たちで勝負をする」
　声を掛けていないにもかかわらず、県内外から１４３人の選手が集まっている。

「日本一を狙います」

　選抜大会の敗戦以降、その準備をしてきた。ピッチングマシンを１５０キロ、高めのボール球に設定。バットのヘッドを立てて、ゴロを打つ練習を繰り返してきた。世代トップクラスの大阪桐蔭高（大阪）の藤浪晋太郎、愛工大名電高（愛知）の濱田達郎、花巻東高（岩手）の大谷翔平を想定してのことである。
　横浜高・小倉コーチの“忠告”によって、さらに強さを増した聖光学院高。日本一に向けた戦いが、間もなく始まる。

＜了＞

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