浮上への鍵は“アンバランスな”攻撃サッカー=G大阪に求められる攻め切る覚悟
大はずれだった開幕前の補強
途中就任の松波監督はいまだチームを立て直せず。とはいえ、この若き指揮官に責任を押し付けるのは酷だろう 【写真は共同】
4節から指揮を執るリーグ戦の戦歴は4勝5分け8敗と、およそ立て直しには程遠い成績しか残せていないクラブ史上最年少の生え抜き監督ではあるが、この数字のすべてを松波監督に押し付けるのは酷というものだ。
今季序盤の低迷は、あまりにも無策だったブラジル人指揮官の力量不足もさることながら、補強の失敗もその大きな要因だ。選手の自主性と、アドリブに近い采配(さいはい)を理解する高い戦術理解力を求める西野サッカーを支えた山口智と橋本英郎といったチームの頭脳を放出したばかりか、開幕前の補強も大はずれ。リーグ戦8試合で無得点だったイ・スンヨルは早々に期限付き移籍で放出され、長年の懸案だった両サイドバックをこなすとの触れ込みだったエドゥワルドも、20節を終えてリーグ戦の出場はゼロと全く戦力になり切れていない状況である。また、負傷離脱を繰り返す新エース候補だったパウリーニョも4得点と、いまだその力を見せきれていない。
低迷の時期を象徴するキーワード
攻めに軸足を置けば、守備が持ちこたえきれず、守備的に入ると今度は攻撃陣が沈黙する悪循環……。そんなチーム内のジレンマが悪い形で結実したのが衝撃的な逆転負けを喫した5月末のサガン鳥栖戦だ。2点をリードしながら1点を献上したチームは「前は攻めに行きたい。後ろは守りたいで間延びした」(松波監督)。昇格チーム相手に失った勝ち点3の喪失感もさることながら、振り返ればこれを機に、指揮官は、攻守の狭間で頭を悩ませることになる。
低迷から抜け出せなかった時期を象徴する松波采配のキーワード「バランス」は、おそらく鳥栖戦のトラウマがもたらしたものだろう。
一方で問われるべきは経験の少ない指揮官の手腕だけではない。「同じような戦いを続けてしまっているのは、戦っている僕ら選手の責任も大きい」。今野が悔しげにつぶやいたように、アディショナルタイムに勝ち越し点を献上したのは鳥栖戦を含めて計4試合。「チャンスで決め切れていないし、勝ちたい気持ちが強すぎて前がかりになって必要のないミスが起きている」と遠藤保仁は振り返ったが、開始早々の失点癖とロスタイムの被弾の多さは、遠藤と今野の現役代表を筆頭に、明神智和ら酸いも甘いもかみ分けるベテランを抱えるチームとは思えない試合運びのまずさがもたらしたものだ。
監督の選定を含めた補強で致命的な失敗を犯した強化部と、経験の少なさが否めない若き指揮官、さらにピッチ内で同じミスを繰り返す選手たち――。開幕前は誰もが予想しなかった降格圏内への低迷は、ある意味で必然と言えるだろう。