ウィリアム王子熱狂、英雄ホイの涙、チームGB世界新連発=自転車トラック

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圧倒的な強さで金メダルを獲得した英国チーム 【Getty Images】

 ロンドン五輪の自転車トラック競技が現地時間2日、初日を迎えた。英国ではこの自転車競技の人気が非常に高く、トップ選手はスーパースター扱い。開会式で英国選手団の旗手を務めたのは、北京五輪でチームスプリント、個人スプリント、ケイリンの三冠を達成したクリス・ホイ。そして、このホイは自転車での活躍を評価され、ナイトの称号を与えられたほどの人物だ。

 それだけの人気を誇るメジャースポーツ。会場となるベロドローム周辺は多数の人出でにぎわい、ベロドローム内も競技開始1時間前にして客席がほぼ埋まっていくという盛況ぶり。さらに驚いたことに、英国王室のウィリアム王子、キャサリン妃も観戦に訪れており、英国内での自転車競技の重要性をうかがい知ることができた。

英国チームが世界新で大会連覇、鳥肌ものの表彰シーン

 そんな“御前試合”となった初日は、男女チームスプリントがメーン。もちろん、男女とも英国は優勝候補だ。しかし、女子チームスプリントで“事件”が発生。北京五輪の個人スプリント金メダリストにして英国のスーパーヒロイン、ビクトリア・ペンドルトンが1回戦において規定の範囲内で走者交代を果たせず、失格処分となってしまったのだ。予選一発目のレースで世界記録を出すなど金メダルが期待されていただけに、そしてこのペンドルトンは英国内では絶大な人気を誇るだけに、失格とアナウンスされた瞬間、とてつもなく大きなブーイングが場内を支配した。

 期待されていた男女アベックでの金メダルが消滅。嫌なムードがベロドローム内に漂ったが、男子の英国チームがこの失格騒ぎを忘れさせてくれるくらい、素晴らしいパフォーマンスを連発してみせた。

 予選からいきなり43秒065の五輪新をマークすると、1回戦では新田祐大、渡辺一成、中川誠一郎(いずれも日本競輪選手会)の日本チームをまるで問題にせず今度は42秒747の世界新を更新。フランスとの優勝決定戦でも、ウィリアム王子が身を乗り出して「GO! GO!」と声援を送るなか、第1走者からリードを奪うと、第2走者、そしてアンカーのホイと周回を経るごとにリードを広げ、またまたとどめの世界新42秒600でフィニッシュ。これまでいくつかの会場へと足を運んだが、この瞬間の拍手と大歓声がダントツで大きかった。

 そして、英国チームの大会連覇をウィリアムズ王子はじめ観客がみな総立ちでスタンディングオベーションの祝福。英雄ホイが涙を流し、大合唱で英国国歌が歌われた表彰式は鳥肌もののシーンだった。

日本代表、英国一色に風穴をあける快走を!

 一方、英国チームの引き立て役となってしまい、決勝進出8チーム中8位に沈んでしまった日本チーム。予選では第1走者・新田の左足のペダルが外れてしまい、思うようなタイムが残せなかったアクシデントもあったが、チームとして今持てる力は出し切った。
 そして、4日の個人スプリントにエントリーしている中川、7日のケイリンに出場する渡辺ともに気落ちすることなく、何とも頼もしいコメントを残してくれている。

「調子はいい。この状態だったらいいタイムでの勝負ができるんじゃないかと思います。予選を4位以内で上がれば勝ち上がりが面白くなる。そこが勝負ですね」(中川)

「少し日にちがあくので、しっかりと休んで今の状態を維持すればメダルを狙える走りができると思います。状態はいいですよ」(渡辺)

 自転車トラック初日は英国一色だったが、そこへ風穴をあけ、地元ファンを驚かせる走りを日本代表に期待したい。ケイリンの母国・日本も自転車はやるぞ、と。

<了>

(取材・文/森永淳洋)
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