超高校級DF植田を筆頭にタレントそろう大会=インターハイ2012展望

安藤隆人

破壊力抜群の2トップを誇る四中工

相棒の田村翔とともにゴールを量産する四中工の浅野、優勝へとチームを導けるか 【安藤隆人】

 青森山田の室屋も、U−17日本代表の不動のサイドバックとして、U−17W杯ベスト8入りの原動力となった。基本は右サイドバックだが、左サイドバック、そしてサイドハーフも高いレベルでこなすことができる。

 彼の持ち味は豊富な運動量に裏付けされた質の高いオーバーラップと守備力の高さだ。バランス感覚に優れ、ピッチ全体を見渡して、的確なポジションを取る。そしてチャンスと見れば一気にサイドを駆け上がり、正確なクロスやセンタリングを供給する。波のない安定したプレーこそ、彼の魅力だ。今年は高校選手権での負傷が影響し、大きく出遅れたが、ここに来て徐々にコンディションを上げており、最後の夏で昨年1回戦敗退の雪辱を誓っている。

 盛岡商の谷村は、184センチの長身を誇り、ボランチからトップ下までこなすセントラルプレーヤー。早生まれの彼は、今年のサニックス杯、新潟国際ユースでU−17日本代表の一員としてプレー。パスセンスとドリブルを持ち合わせ、ここにさらにフィジカルが付けばより面白い存在になるだろう。

 帝京長岡の小塚は1年生の頃から不動のレギュラーでプレーし、今年に入りU−18日本代表に選出され、スロバキア遠征を経験。地元・アルビレックス新潟の特別指定選手となった。ドリブルを得意とし、左サイドからのカットインが魅力のアタッカーだ。

 そして、四中工の田村翔と浅野のツートップは、全国トップクラスの実力を持つコンビだ。昨年度の高校選手権において、準優勝を果たせたのも、当時2年生ツートップの彼らが大暴れしたからこそ。田村翔は県予選得点王、浅野は選手権得点王に輝いた。彼らのコンビネーションはまさに『あ・うんの呼吸』。最前線で浅野がターゲットになるだけでなく、自らも突破からシュートできる能力を発揮すると、その後方から田村翔が質の高い動きでスペースに飛び出してくる。田村翔が浅野を追い越し、再び浅野が田村翔を追い越す。その逆もしかりだ。このコンビネーションはすでにプロからも高い評価を得ており、2人ともJリーグ入りは確実視されている。この2人が今大会で爆発すれば、今年の四中工の優勝が近づいてくる。

広い視野で局面を打開する静岡学園・渡辺

 昨年のインターハイで準優勝した静岡学園の渡辺はパスセンスに秀で、広い視野から繰り出される正確なパスでゲームをコントロールする。2年生時からナンバー10を背負う逸材は「プロになりたい。でもまだ運動量が足りないし、もっとシュートを打たないといけない」と課題を理解しており、その改善に努めている。この夏でしっかりと存在をアピールしたいところだ。

 立正大淞南の林は、ゴール前で存在感を放つストライカー。特段足元の技術やスピードがあるわけではないが、チャンスの時に「必ずそこにいる」選手だ。ペナルティーエリア内での嗅覚(きゅうかく)が高く、身体能力の高さを生かし、ときにはアクロバティックなシュートを決めてみせる。時折周囲を驚かせるダイビングヘッドやボレーシュートも一見の価値ありだ。

 彼ら以外にもタレントは控えている。的確なポジショニングとフィードが光るU−18日本代表のセンターバック諸石健太(桐光学園)。機敏性に優れたMF福本将也(東福岡)。小柄だがスピードに優れるFW皿良優介(尚志)。安定したゴールキーピングが光るGK大森伸平(松山工)、ハイボールに強いGK置田竣也(星稜)、驚異的なバネを生かしたセービングが魅力のGK岩崎知瑳(東福岡)らも面白い存在だ。2年生に目を向けてみると、流通経済大柏のMF青木亮太、尚志のMF高慶汰、四中工のGK中村研吾ら、来年の主役候補はいる。

 果たして彼らがその名の通り、北信越で『きらめく』のか。それともサッカー界を驚かせる新星が現れるのか。白熱のインターハイの幕がいよいよ切って落とされる。

<了>

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著者プロフィール

1978年2月9日生まれ、岐阜県出身。5年半勤めていた銀行を辞め単身上京してフリーの道へ。高校、大学、Jリーグ、日本代表、海外サッカーと幅広く取材し、これまで取材で訪問した国は35を超える。2013年5月から2014年5月まで週刊少年ジャンプで『蹴ジャン!』を1年連載。2015年12月からNumberWebで『ユース教授のサッカージャーナル』を連載中。他多数媒体に寄稿し、全国の高校、大学で年10回近くの講演活動も行っている。本の著作・共同制作は12作、代表作は『走り続ける才能たち』(実業之日本社)、『15歳』、『そして歩き出す サッカーと白血病と僕の日常』、『ムサシと武蔵』、『ドーハの歓喜』(4作とも徳間書店)。東海学生サッカーリーグ2部の名城大学体育会蹴球部フットボールダイレクター

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