アロンソ、チャンピオン獲得へ大きく近づく今季3勝目=可夢偉は自己最高の4位で汚名返上

吉田知弘

解雇のうわさまで出ていた可夢偉だが……

自己最高の4位入賞を果たした可夢偉は完ぺきに近いレースを見せた 【写真:ザウバー】

 12番手からスタートした小林可夢偉(ザウバー)は自己最高位を更新する4位入賞となった。

 フル参戦3年目を迎え、開幕戦オーストラリアGPで6位、第5戦スペインGPでも5位入賞を果たしたが、シーズン前半は戦略ミスが目立ちポイントを取りこぼすレースも多かった。この1カ月は特に流れが悪く、第8戦ヨーロッパGPでは4位快走も不運なアクシデントでリタイア。前回第9戦イギリスGPでは巧みなレース戦略でポイント獲得間近だったが、ピットストップの際に定位置で止まりきれずにメカニックと接触するという致命的なミスを犯してしまった。その間に僚友セルジオ・ペレスが実力を発揮。2回の表彰台を経験し、可夢偉よりも多くのポイントを稼ぐ。各国メディアも自然とペレスに注目するようになり、逆に可夢偉は「ザウバーチーム解雇」といううわさまで飛び出していた。

「次に何か失態をすれば、確実にシートを失う」という状況で迎えた今回のドイツGP。しかし、逆に言えば「ミスさえしなければ確実に結果は出る」。おそらく可夢偉は後者の考え方を信じていたに違いない。12番手スタートの可夢偉は上位陣とは異なるミディアム→ミディアム→ソフトでつなぐ2ストップ作戦を選択。今シーズン序盤から可夢偉とザウバーチームがこだわって選んできた戦略であり、なかなか結果が出なくて「失敗だ」と言われ続けてきた戦略だ。

完ぺきに近かったレース

 予選がウエットだったため路面状況も良くなく、タイヤの消耗に苦しむドライバーも多かった中で可夢偉は終始安定したペースで周回を重ね、残り24周というところでソフトタイヤにチェンジ。最終スティントでは1分19秒前半のペースで何度かファステストラップも記録し、心配されたタイヤの消耗によるペースダウンも見られず、最後の最後までプッシュした。

 レースは5位でフィニッシュしたが、2位のベッテルがペナルティーを受け、可夢偉は自己最高位を上回る4位入賞が決定した。これも最後まで続けたプッシュがなければ実現しなかった結果(順位の繰り上がり)だった。そういう意味で、今回の可夢偉のレースは結果・内容ともに完ぺきに近かったのだ。

 ここ数戦の汚名を一気に返上するレースを見せてくれた可夢偉。しかし、次回以降も同じような活躍ができるとは限らないし、サーキットによっては序盤戦のような苦戦を強いられることもあるだろう。可夢偉ファンの方々にとっては一喜一憂するレースが今後も続くかもしれない。ただ、確実に言えることは「可夢偉は期待外れだった」と判断するのは時期尚早だということだ。

<了>

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著者プロフィール

1984年生まれ。幼少の頃から父の影響でF1に興味を持ち、モータースポーツの魅力を1人でも多くの人に伝えるべく、大学卒業後から本格的に取材・執筆を開始。現在では国内のSUPER GT、スーパーフォーミュラを中心に年間20戦以上を現地で取材し、主にWebメディアにニュース記事やインタビュー記事、コラム等を掲載。日本モータースポーツ記者会会員

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