2大会ぶりの金メダルを狙う体操ニッポン、注目ポイントは!?=男子団体・展望

日本体操協会:遠藤幸一

日本、中国、米国の三つどもえ 日本チームは完成度で勝負

日本の最大のライバルとなる中国チーム。鉄棒と平行棒では種目別トップの選手をそろえている 【坂本清】

 次に、団体の出場選手が北京大会での6名から5名になったことについて触れておこう。ロンドン大会における団体決勝では5−3−3制(5名の登録選手の中から各種目3名が演技し、そのすべての得点合計が団体得点となる方式)で行われる。6種目で3演技なので全演技は18。単純に考えて6名の場合、1名あたり3種目を担当することになるが、5名になれば3.6種目となる。6名から5名になったことでこれまで演技しなくてもよかった種目で演技することになるが、誰がその穴を埋めるのか、初めて5名で行われる団体戦において問われる重要なポイントだ。

 団体では、現状の選手層から考えて、ノーミスなら中国、日本、米国の3カ国が優勝を争うことになるであろう。Dスコアの高さでは、やはり中国が強さを見せている。特に種目別1、2位の選手を擁する鉄棒や、その実力を持つ平行棒は、他国を圧倒する強さを誇っている。しかし、ゆかにもう一枚のコマがない状況である。それに対して米国はゆか、跳馬での強さが光るが、鉄棒では日本、中国に追い付けていない。一方、日本は総合力に長けているが、他を圧倒する種目がない。このことから、日本には、他国よりも秀でた美しさと完成度を武器に、Eスコア(でき栄え点)で優位に試合を進めたいところだ。

 なお、団体予選において1位か2位であれば決勝はゆかから、3位であればあん馬から演技することになる。日本は1位通過でゆかから入ることを第一想定としており、その通りに進むことを期待したい。その結果であれば、団体決勝でのアドバンテージだけでなく、個人総合と種目別の決勝進出につながり、メダル獲得の可能性も広がることになる。7月28日の予選は、メダリストこそ決まらないが、各国ともに手を抜くことない真剣勝負となるためすべての演技に注目したい。

種目ごとの見どころ=世界大会初出場の加藤に注目

唯一大学生で五輪出場を決めた加藤。世界選手権の経験がないまま五輪に出場するのは4年前の内村と同じだ 【坂本清】

 ゆかは、加藤凌平(順大)と内村が後方伸身宙返り3回半ひねり(E難度)からの宙返り連続を始めとし、組み合わせ点獲得を重視した演技構成で挑む。Dスコアを向上させるため、高難度の技を組み合わせているが、正確なひねりと着地でアピールしたい。

 あん馬は、少しのバランスの崩れですぐに落下につながる緊張の種目。この種目で大過失のない実施は、自分たちが優位に立つため、そして相手にプレッシャーを与えるために重要である。内村、山室光史(KONAMI)に続き、元気のいい加藤の演技の国際的な評価をみたい。

 つり輪は2011年世界選手権の種目別銅メダリスト・山室をエースに、正確な演技で得点を上積みしたい。特に田中佑典(KONAMI)の振動技から静止技への決めは力強さが日に日に増しており、さらに成長した演技を披露してほしい。

 跳馬は、Dスコア7点の選手を2名擁する中国と米国に難度面で遅れをとっているが、でき栄え(Eスコア)の評価では圧倒したい。

 平行棒は、内村と田中兄弟(和仁=徳洲会体操クラブ、佑典)の正確な演技で乗り切りたい種目。あん馬同様に、少しのバランスの崩しが大きなミスにつながるので、演技前のバーの準備を素早く、いつも通りに行って、自信を持って演技に臨みたい。

 鉄棒は前述した通り、いまだにDスコアの進化を続けている種目。そして、そのDスコアが上がれば上がるほど、落下やバランスを崩しやすくなり、一瞬も目を離せない緊張の演技となっていく。前の演技者全員が納得の演技で最終演技者の内村までタスキをつなげれば、これまでの最高の演技を見せてくれるに違いない。

 以上、期待を込めた展望となったが、今回の日本チームはパーフェクトな演技はもちろん、ミスをした時のカバーリングが十分にできる状態に高められていると思う。時差調整、器具調整など、海外での競技会ならではの課題も報道されているが、今回のチームならすべてを克服して本番を迎えることだろう。

<了>

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著者プロフィール

1961年東京生まれ。日本体操協会常務理事・総務委員長。体操の金メダリストである父親を持つものの、小学、中学はサッカーに明け暮れていた。高校で体操に転身。国際ルールのイラストレーターとして世界中の体操関係者にその名を知られている。

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