ウェバーとアロンソ、勝敗を分けた戦略の違い=可夢偉、痛恨のピットミスで入賞逃す

吉田知弘

可夢偉に痛いピットミス、8位で戻れたはずが……

可夢偉はピットでオーバーラン、痛いミスで入賞を逃した 【Getty Images】

 前回ヨーロッパGPで受けた5グリッド降格ペナルティにより、17番手と後方からのスタートとなった小林可夢偉(ザウバー)。今回は他のチームとは異なり、前半2セットをハードタイヤ、終盤にソフトタイヤを使用する戦略で逆転を狙った。

 これまで他のチームと異なる戦略を選んだときに限ってペースが伸びず、チームの戦略ミスが指摘されてきたが、ザウバーが得意とするシルバーストンでは前方のマシンを追い回すレースを披露。攻撃的な走りで徐々に順位を上げていった。

 レース中盤ではトップを走るアロンソと同じ1分37秒後半〜38秒前半のペースで周回を重ねた。特にミハエル・シューマッハ(メルセデスAMG)とのバトルでは、34周目に相手が先にピットに入ったのを確認すると、可夢偉はコースにとどまって自己ベストタイムを連発。ピット戦略でシューマッハを完全に逆転するのは確実に思われた。

 だが、37周目の自身2回目のタイヤ交換時に自チームのピットに止まりきれずオーバーラン。メカニック数名と接触してしまうなど、大きくタイムをロスしてしまう。結局この遅れが響き、8位でコース復帰できる予定が12位まで後退。その後はソフトタイヤで挽回(ばんかい)を試みるも、ポイント獲得には1歩及ばず、11位でフィニッシュとなった。またピットイン時の事故について、レース後にFIAから罰金244万円が言い渡されてしまった。

 致命的なミスにより入賞のチャンスを逃してしまった可夢偉だが、それまでのレース運びはシーズン前半にはなかった「安定した速さ」が見られた。特に今回のような高速コーナーの多いスパ・フランコルシャン・サーキット(ベルギーGP)や鈴鹿サーキット(日本GP)などでは上位進出も十分に狙えそうだ。

 前戦のヨーロッパGPではピット作業で大幅に遅れ、今回の予選ではチームがタイヤの選択ミス。さらに、決勝では自身が痛恨のミスを犯し、入賞を逃す……。悪い流れが続いており、窮地に立たされている可夢偉。しかし、今回も今後に向けて期待が持てる内容ではあった。我慢の展開が続くが、次戦こそ“負の連鎖”を断ち切ってほしい。

<了>

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著者プロフィール

1984年生まれ。幼少の頃から父の影響でF1に興味を持ち、モータースポーツの魅力を1人でも多くの人に伝えるべく、大学卒業後から本格的に取材・執筆を開始。現在では国内のSUPER GT、スーパーフォーミュラを中心に年間20戦以上を現地で取材し、主にWebメディアにニュース記事やインタビュー記事、コラム等を掲載。日本モータースポーツ記者会会員

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