議論の余地なき偉大なフットボールとスペインの覇権=もはやライバルは見当たらない

ラ・ロハはFWを起用すべきか

左サイドバックで定位置をつかんだジョルディ・アルバ(右)ら、新たな選手の台頭も見られた 【Getty Images】

 確固たるプレースタイルが根付き、ケガや選手の高齢化によって弱体化したいくつかのポジションには新たな選手が台頭している。先日バルセロナと契約したジョルディ・アルバはその1人で、左サイドバックの定位置をつかんだ今大会は素晴らしいプレーを見せた。また、セルヒオ・ラモスはアルバロ・アルベロアに右サイドバックを任せ、カルレス・プジョルが不在のセンターバックとしてジェラール・ピケと鉄壁のコンビを組んだ。そしてデル・ボスケはテクニックに優れたMFをたくさん起用すべく、トーレスや他のFWではなくシルバを前線に起用することを選んだ。

 今大会のスペインのシステムは、守備的な2人のMF(シャビ・アロンソとセルヒオ・ブスケツ)と攻撃的な4人のMF(シャビ、アンドレス・イニエスタ、シルバ、セスク・ファブレガス)が4バックの前に並ぶ、FWなしの4−2−4と表現することができる。それが時にペドロとトーレス(もしくはヘスス・ナバスとアルバロ・ネグレド)が前線に加わる4−2−2−2に変形していた。

 FWの不在時は決定力が下がり、FWを起用すれば得点力が上がるという違いはあったものの、彼らが優先したのは常にボールを持ち、丁寧に扱い、独占することで、対戦相手に何もさせないことだった。

 おしゃべりが欠かせない生活の一部となっているスペインでは、今後も間違いなくラ・ロハがFWを起用すべきかどうかの議論が続くことだろう。だが、ルイス・アラゴネス以前の時代に戻ることを望む者はいないはずだ。

「闘牛になるか、闘牛士になるか」の決断を迫られていた当時の代表は、闘争心だけが取りえだった“ラ・フリア・ロハ”(激高の赤=当時の代表の愛称)からボールを支配するチームへと生まれ変わった。今こそわれわれは、あの時代に下された重要な決断を祝福すべきなのかもしれない。

<了>

(翻訳:工藤拓)

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著者プロフィール

アルゼンチン出身。1982年より記者として活動を始め、89年にブエノス・アイレス大学社会科学学部を卒業。99年には、バルセロナ大学でスポーツ社会学の博士号を取得した。著作に“El Negocio Del Futbol(フットボールビジネス)”、“Maradona - Rebelde Con Causa(マラドーナ、理由ある反抗)”、“El Deporte de Informar(情報伝達としてのスポーツ)”がある。ワールドカップは86年のメキシコ大会を皮切りに、以後すべての大会を取材。現在は、フリーのジャーナリストとして『スポーツナビ』のほか、独誌『キッカー』、アルゼンチン紙『ジョルナーダ』、デンマークのサッカー専門誌『ティップスブラーデット』、スウェーデン紙『アフトンブラーデット』、マドリーDPA(ドイツ通信社)、日本の『ワールドサッカーダイジェスト』などに寄稿

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