リーグ初の現役高校生と30歳目前の決意…新たなスタートを切った新人=bjリーグ ドラフト会議

柴田愛子

島根スサノオマジックから指名を受けた石井、30歳を目前にプロへ挑戦する 【(C)AFLO SPORTS/bj-league】

 仙台、東京、大阪で開催された一次選考に続き、埼玉で行われた最終選考を経て、2012−2013シーズンに向けた、『bjリーグ ドラフト会議2012』が6月19日に行われた。トライアウトを受験した193名のドラフト対象選手の中から指名を受けたのは17名。狭き門をくぐり抜け、プロへの道が開かれた選手は、緊張と安堵(あんど)が入り混じる表情でプロへの決意を語った。

 今年のドラフトは1巡目のみ全チームが指名選手を提出の上、指名が重複した場合は、抽選で優先交渉権獲得チームが決定する新方式が取られた。2巡目以降はストレートウェーバー制(全ての巡目において下位チームから指名する方式)を採用。注目の1巡目は11チームの指名が重複し、選手ごとに行われた抽選では新規チームの群馬クレインサンダーズ、東京サンレーヴスがそれぞれ1位指名の優先交渉権を獲得する引きの強さをみせ、新シーズンに向け幸先のよいスタートを切った。

バスケを仕事にしたい!30歳目前でプロを目指した石井

 プロへの切符を手にしたのは、輝かしい経歴を持つ選手もいれば、10代の現役高校生など、その顔触れは様々。そんな中、ケガを乗り越え、30歳を目前にプロへの挑戦を決めた石井考生(曙ブレーキ工業)に注目した。島根から2位指名を受けた石井は、名門能代工高出身で、秋田ノーザンハピネッツの石井秀生は実弟。両親がミニバスケットボールの指導者だったこともあり、4兄弟全員がバスケをしていたという、まさにバスケ一家で育つ。

 能代工高から大東大に進んだのち、埼玉の実業団チームでバスケを続けていた。バスケのある生活が当たり前となっていた石井。しかしケガによって彼の人生は大きく変わり始める。「ケガをしてから、今いるチームでも使ってもらえなくて、使ってもらえてもうまくいかなくて……」。
 物心ついたころからバスケとともに歩んできた人生。つらいことはあっても、バスケを嫌いになったことは一度もなかったという。それが初めてバスケをするのが嫌になり、バスケも会社もやめて地元の秋田に帰ろうとしていた。そんな彼を引きとめたのがバスケ仲間だった。

「仲間を通じていろんなチームに参加させてもらい、そこでいろんな人とバスケをすることで、改めてバスケの面白さを知りました。だんだん動けるようになってくると、体も絞れてきて昔のようにキレのあるプレーもできるようになったんです。自分はまだまだいけるんじゃないかという手ごたえを感じました」
 そうなると毎日でもバスケをやっていたいと思うようになった石井。プレーヤーとしては決して若くはない年齢であったが、バスケを仕事にしたいと一念発起し、bjリーグのトライアウトを受けたという。

「bjリーグのトライアウトもやれるだけやってみようという気持ちで挑戦しましたが、正直どこも指名してくれないかも……とも思っていました。今年30歳になるという年齢、身長195センチだと、bjリーグでインサイドをするには中途半端。でもインサイドしかできないので、ポジションも中途半端……。指名されてうれしかった半面、どこを評価してもらったのかまだ分かりません(笑)。自分としてもびっくりです」と驚きを隠せない様子。

 また、島根スサノオマジックから指名を受けた瞬間、ジェリコ・パブリセビッチHCの下でバスケができることに興奮したという。「ジェリコHCがどんな練習をするんだろう、どういうバスケをするんだろう、どんな考え方をしているんだろうと楽しみばかりです」と興奮気味に語った石井。プロの世界で自分が通用するのか不安はあるが、新たな挑戦に今からワクワクするそうだ。

「島根は今まで行ったことがないので、契約することになれば初めての土地で新しいスタートを切ることになります。僕はきれいなプレーとは無縁な選手です。泥臭い走りであるとか、数字に残らなくてもチームの為になるような献身的なプレーを心掛けていこうと思っています」と新たな挑戦へ意欲を燃やす。

 一度はバスケのない生活を選ぼうとしたが、再びバスケ一色の人生へと舵(かじ)をきった石井。プロの大海原で大いに暴れて欲しい。

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