優勝の可能性を高めるバロテッリの目覚め=ドイツ 1−2 イタリア
まるでクラブチームのようなイタリア
献身的なプレーを見せながら弱気な面も目立ったバロテッリ(中央)だったが、ドイツ戦では潜在能力を生かし2ゴールを決めた 【Getty Images】
イタリアの試合を見ていると、攻めている時も、守っている時も、選手と選手の距離が一定に保たれていることに気づく。守備の場面ではDF同士がつねに連係し、1人のDFが相手にチャレンジに行けば、ほかのDFが必ずカバーに回るといったチームとしての守りができている。攻撃の場面でも、マリオ・バロテッリがスペースに走り込むような場合を除いて、つねにサポートが付いて複数のパスコースが確保されている。
たとえば、イングランドの攻撃ではウェイン・ルーニーが中盤でのゲーム作りからフィニッシュまですべてをこなさなければならず、彼の負担は極めて大きくなっている。
だが、イタリアの場合、もちろんパス回しの中心はピルロであり、トップ下ではモントリーボがラストパス……といったような役割の違いはあるが、どの選手も平均して仕事を分担している。それだけに無理な走りを要求されるようなことがなく、相当な移動距離を記録しているようでも、疲労を蓄積させないで済むのだろう。
要するにチームとして戦っている。それが、今大会のイタリアの特徴なのだ。そう、「まるでクラブチームのような」と形容していい。
これは単なる比喩(ひゆ)ではない。GKのブッフォン、最終ライン、そしてアンカーの位置にいるピルロら、チームの根幹はユベントス勢なのである。ユベントスも2011−12シーズンは4バックと3バックを併用して戦っていた(イタリアでは3バックで戦うチームが数多くあり、一部では「ガラパゴス化」とやゆする向きもあった)。プランデッリ監督は、そのユベントスの組織をしっかり代表に生かしてチーム作りをしているわけだ。
代表チームのチーム作りというのは難しい。チームとして合同トレーニングの機会はユーロのような大会期間中を除いてほとんどないのだ。普段の国際試合の場合、集合して、簡単な調整をして、試合を戦ったらすぐに解散。その繰り返しでしかない。
2010年W杯・南アフリカ大会での惨敗を受けて就任したプランデッリ監督には、まだ長期のトレーニング期間が与えられることがなかったはずなのだ。そこで、プランデッリ監督はユベントスというクラブの組織を利用してチームを作ったのだ。
今大会参加16チームの中で「まるでクラブチームのよう」と思えたのは、イタリアとドイツだけだった。スペインもバルセロナとレアル・マドリーの連合軍であり、また長期間あまりメンバーが変わらずにやってきたはずだが、トップが固定できず(トップ不在)、結局フィニッシュの段階では個人能力頼みになっている。
ドイツは、メンバーは若いが、レーブ監督が長期にわたって指導しており、また、多くの選手が年代別代表から昇格しているためにチームとしてのコンセプトを全員が共有している。そのドイツとの準決勝で、チームの完成度という面で上回るところを示したイタリア。さらに自信を深めたことであろう。
スペイン相手でも勝機はかなりある
グループステージから内容的に素晴らしい試合をしてきたイタリアだったが、優勢だったスペイン戦では1点しか奪えず、準々決勝のイングランド戦では35本(枠内は20本)のシュートを打ちながら120分間無得点に終わっていた。
その原因がバロテッリだった。
今大会のバロテッリは、決してサボることなくチームのために献身的にプレーしている。相手の守備ラインの裏への飛び出しも素晴らしい。だが、シュートを打てるところでパスを選択するなど弱気が目立った。準々決勝までの4試合でゴールはアイルランド戦の1点のみ。だが、その潜在力を買ったプランデッリ監督はバロテッリを先発で使い続け、ついにドイツ戦ではその能力を生かした2ゴールを決めて見せたのだ。
こうして、イタリアは初戦で引き分けたスペインと決勝で再び顔を合わせることになった。
初戦でもそうだったように、パス能力に勝るスペインがボール支配率で上回ることは間違いない(初戦ではスペインが60パーセント)。だが、決定力不足(FW不在)のスペインがイタリアの組織的守備からゴールを奪うのは、それほど容易なことではない。バロテッリが目覚めたことを考えると、イタリア勝利の可能性もかなりあると見るべきだろう。
<了>