夢より深く=シリーズ東京ヴェルディ(4)=混戦J2 3位で折り返し、いざ後半戦へ
リーグトップの40得点で3位につける
阿部は12ゴールを挙げ得点ランク2位。万能ぶりを発揮し、東京Vの攻撃陣をけん引する 【写真:築田純/アフロスポーツ】
東京Vはリーグトップの40得点が光る。攻撃陣の中心は得点ランク2位の12ゴールをマークする阿部拓馬だ。シュートを打たせて良し、ドリブルを仕掛けて良し、パスを出させて良しの万能ぶり。ピンチには自陣深くまで戻り、ディフェンスまでやってのける。奔馬(ほんば)、空を行くがごとき活躍だ。
チーム強化の成果は挙がっている。大卒3年目の阿部をはじめ、和田拓也、高橋祥平、梶川諒太といった20代前半の選手が着実に力をつけ、戦力として計算できるようになった。一方、西紀寛、飯尾一慶、土屋征夫、森勇介ら、10年以上のキャリアを持つ手練れもいる。選手構成のバランスは整っている。
川勝良一監督はシーズン前半を振り返り、こう語った。
「13勝1分け7敗の数字は悪くない。7敗はちょっと負けすぎだけど。2勝1敗のペースで勝ち点を積み上げていければ、昇格の目標はクリアできる。セットプレーで落としたゲームが半分ぐらいあったかな。そこはもっとシビアにやっていかなければいけない。首位より2位や3位の方がプレッシャーが少なくて戦いやすいと言う人もいるが、自分の考えはそうではない。あえて先頭のポジションでキツい風圧に耐え、周囲からの厳しいプレッシャーを受けながら戦いたいね。そうしていくことでチームはさらに成長できる」
指揮官のさい配にも変化
川勝監督は豊かな表現力の持ち主だ。それでも相手が理解可能な部分を推し量り、考えの中から抽出して話していると思われる。サッカーの指導者に限らずどの仕事でもそうだが、他者に自分の頭の中を開き、感覚的なことを言葉で説明する場合はそうならざるを得ない。「攻め勝つ。J2を勝ち抜くための既存の教科書を破りたい」「Jリーグの次元を超えたパスサッカーを実現する」「ゴール前のダイレクトプレーによる崩し。一見すると偶然の産物に見えるのを、トレーニングによって必然まで高める」などのキャッチフレーズを投げかけるのは、気を利かせたサービスに加え、誤解を避ける知恵でもあるのだろう。そっくりそのまま使用できるため、聞き手の解釈を挟む余地がない。
わたしにとって川勝監督は、東京Vの取材歴で最も多くの対話を重ねた指導者である。だから、ちょっとだけ本音の部分に手が届きそうな気がする。言葉にウソをまぶしていないのだろうが、心の底にあるものは違うのではないか。本当に欲しているものは何なのか。垣間見せる表情や言葉の切れ端を手がかりに想像している。