どんな時でも「いつも通り」 西武・牧田の変わらぬスタイル
度胸と投球術で勝負するアンダースロー
昨年はシーズン途中から抑えに転向し、新人王に輝いた西武・牧田 【写真は共同】
「いつも通り」――。
2011年ドラフト2位で埼玉西武ライオンズに入団後、すぐにその頭角を現した牧田和久。
それまで球界を代表するアンダースローだった渡辺俊介(千葉ロッテ)とはまた異なるタイプのアンダースロー。渡辺俊介の武器がブレーキの利いた時速100キロに満たない変化球だとすれば、牧田の武器は下から浮き上がってくる威力のある直球。新人離れした度胸と投球術で並み居る強打者を抑え、開幕からローテーションの一角を担った。
しかし、チームの「守護神不在」という苦しい投手事情から、6月末から抑えに転向。ルーキーながら、チームを勝利へと導く最後の1イニングという大きなプレッシャーを背負い、1シーズン戦い抜いた。結果的にその活躍が認められ、チームとしては99年の松坂大輔(レッドソックス)以来の新人王に輝いた。
先発と抑えを経験、両者の気持ちが「非常に分かりますよね(笑)」
「昨年は抑えをやっていた期間が長かったので、今年に入ってまた先発に戻って、感覚が“抑えの感覚”になっていたことに気づいた。投げ方も、先発の投げ方を忘れてしまって、配球も抑えの配球だったと思う。ストレートとかスライダーとか速球ばっかりで緩急も使えてなかった」
2011年に抑えとして22セーブを挙げた「守護神」は再び先発として投げる自分の姿に違和感を感じた。
「昨年先発をしていたときは、ピッチングの中に緩急というか、柔らかさがあったんですけど、抑えというのは1点も取られたらダメなんで。常に100%というか思い切り投げる感じだったので、柔らかく投げるっていう感覚が全然なかったんです。抑えの感覚で先発のような長いイニングはもたないので、それをまたつかむのに時間がかかりましたね」
キャンプからオープン戦とその感覚をつかむために時間を費やした。試行錯誤の末に、その先発としての感覚を再び取り戻すことができたというのは、彼のここまでの成績を見れば一目瞭然だ。
プロ2年目にして、めまぐるしく変化する状況の中でも得たものもあった。先発と抑え、両方を経験したことで、両方の気持ちが分かるようになった。
今季序盤、最下位を走っていたライオンズは終盤に中継ぎ陣や抑えが打ち込まれ、逆転負けを喫するという試合が続いていた。
「(気持ちは)非常に分かりますよね(笑)。(前半戦に抑えだった)ゴンザレスも厳しい場面で出ていくので『何とか……』って思いますし、西口(文也)さんとか石井(一久)さんが好投していて中継ぎや抑えが崩れちゃったりすると、イラッとはしないですけど『頼むよー』とは思いますね」
アピールや結果よりも「自分のピッチングを心がける」
しかし、今後のテーマについても「いつも通り」を強調する。
「チームが勝つために、自分のピッチングを心がけること。いつも通りの自分の役割をするだけですかね。アピールとか結果とか大事だと思いますけど、その前に大事なのは普段の自分の“スタイル”。
(スタイルを)特に変えようとは思っていないですね。どこか変えようと思うときっていうのはやっぱり壁にぶち当たったときです。たぶん壁にはいつか絶対にぶち当たると思うので、それまでは対策を練りながら、とりあえずこのスタイルです」
その言葉通り、牧田は自身のスタイルで今シーズンも勝ち星を重ねている。
ちなみに今シーズン、2年目を迎え、後輩もできた。そんな後輩たちに先輩・牧田からアドバイスをするとしたら――。
「やっぱり『いつも通り』じゃないですか? 自分の。100%の力を出そうとしても、すぐに実力の100%は出ないと思うので。十亀(剣)なんか見てると、100%以上の力を出そうとして120%出そうとしてしまうから、出ないと思うんですよね。100%しか出ないので。ずっと100%だと体が持たないので、いかに好調をキープして、不調を小さくするか。常に右肩上がりの人はいないと思うので、あとはもうポジティブに思うしかないですよね。気持ちです」
「勝つしかない。勝たないと意味がない。終わってみて『よくやった』って思ってもらえるように、やるしかない」
強い決意とともにインタビューを締めくくった牧田。勝負のシーズンはこれから中盤戦へと向かう。
<了>
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