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オランダ最大の敵は移動距離だった?
“死のグループ”でまさかの3戦全敗

サッカーの体をなさなかった

優勝候補にも挙げられながら、まさかの3戦全敗に終わったオランダ。何から何までうまくいかず、サッカーの体をなさなかった
優勝候補にも挙げられながら、まさかの3戦全敗に終わったオランダ。何から何までうまくいかず、サッカーの体をなさなかった【Getty Images】

 グループリーグはずっとウクライナで過ごした。ハリコフでオランダの試合を見てからキエフに移動し、スウェーデンの試合を見てからまたハリコフへ行く――ということの繰り返しである。


 飛行機はいずれも早朝便。21時45分キックオフの試合を見た後は2時間ほどの仮眠がとれるだけである。それでもしょせん片道1時間ほどのフライトだから最初の2往復は余裕だったが、移動の初日は長めの昼寝を必ず取った。とうとう最後の3往復目でちょっと疲れを感じ始めた。


 疲れが出るとちょっとしたことに気が立ってしまう。レストランで席に着いたとたん、ウエートレスが「飲み物をコーヒーにするか、紅茶にするか」と聞いて来たので、まずはメニューを見せて欲しいと言ったら舌打ちをされた。もう、それだけでムカつきを抑えるのに必死になり、食事がまずくなってしまった。

 

 今回、オランダは3連敗で大会を去った。どのチームが決勝トーナメントに進出してもおかしくない顔ぶれがそろった死の組だっただけに、オランダのグループリーグ敗退はあり得ると思っていたが、まさか全敗するとは思わなかった。


 驚きだったのは、彼らの自滅パターンである。キックオフから20分ぐらいは相手を押し込むのに、一発で失点を食らってしまった。すると突然チームはバラバラになり、中盤のスペースが大きく広がる前後分断サッカーに陥り、修正不可能になってしまう。1戦目、2戦目はファン・デル・ファールト、フンテラール、カイトを投入し、3戦目は前者2人をスタメンで起用したため持ち駒がなくなってアフェライ投入にとどまったが、ともかくこの交代策は裏目に出るばかりで、オランダはサッカーの体をなさなかった。


「ファン・マルワイク監督には“プランB”がない」ということはすでに書いたが、選手たちのコンディションがあまりにひどかったのもオランダ不振の原因だった。1点を失い、相手に試合の流れが渡ると、選手の動きは鈍り、挽回(ばんかい)するきっかけすら得られなかった。オランダの3敗はいずれも1点差負けだが、ドイツ戦、ポルトガル戦は大量失点を食らってもおかしくなかった。

不必要に長かった移動距離

 すると僕のキエフ、ハリコフの3往復の経験が生きてくる。この間、たった500キロ。それでも2日に一度、徹夜を繰り返しながら泊まる場所を変えるのだから、心身に疲労はたまる。


 一方、オランダのキャンプ地クラカウとハルキフの距離は実に1350キロ。試合が夜の11時40分ごろ終わり、ロッカールームに戻ってから記者対応をし、選手によってはドーピングコントロールがある。そうこうすると、チームの飛行機がハリコフを発つのはどうしても夜中の2時過ぎになってしまう。


 それでも、初戦のデンマーク戦で少なくとも勝ち点1を奪っておけば良かった。しかし、負けたものだから雰囲気は悪かった。そもそも今回のオランダ代表は大会前からフンテラール、ファン・デル・ファールト、カイトら控え組の不満が募っていた。


 しかもデンマーク戦後とドイツ戦後、オランダの飛行機は1時間の遅れが発生した。飛行機に遅れはつきものだが、心身消耗した中での真夜中の遅れはダメージとなった。オランダがキャンプ地に戻るころには、もう空は明るくなっている。おそらくどこのチームも試合後は徹夜の移動になったと思うが、オランダの場合、その距離が不必要に長かった。


「試合が終わってから空港へのバスは冷房がなかった。飛行場も冷房がない中、飛行機が遅延してイライラした。でも、これが負けたことの言い訳にはならないけれどね」(スナイデル)

3連敗の原因はいくつもあるが

 この時期、クラカウは涼しく雨も降り、快晴続きのハルキフと比べて温度差が10度もあった。1350キロという距離は、アムステルダムとバルセロナの約1500キロよりやや短い程度。「何もぜんぜん気候が違う中でキャンプをしなくても良かったのでは!?」という疑問の声はオランダでも出ていた。


 オランダ代表がキャンプ地に求めていたのは、良い練習施設と良い町の雰囲気だった。ビスラ・クラカウのスタジアムはそれこそ理想的な環境で、観光地であるクラカウも長期滞在には適していた。


 しかし、ユーロは中3日で試合を繰り返す大会。オランダの場合、試合前日にハルキフに着いて前泊し、試合を終えると徹夜でクラカウに戻り2泊半。それからまたハルキフで1泊……というのを長距離で繰り返したのだから、これはキツい。特にチームの成績が伴わない中だっただけに、ダメージは相当だった。


 オランダ代表のサッカーがオールドファッションだったこと、選手たちに長年代表選手を務めてきたマンネリ化があったこと、そしてオランダのサッカーは相手も熟知して対応しやすかったことなどなど、3連敗の原因はいくつもあると思うが、疲労のリカバリー失敗もあったと思う。今回のオランダは参加国中、一番長い距離を移動していた。


<了>

中田徹
中田徹

1966年生まれ。転勤族だったため、住む先々の土地でサッカーを楽しむことが基本姿勢。86年ワールドカップ(W杯)メキシコ大会を23試合観戦したことでサッカー観を養い、市井(しせい)の立場から“日常の中のサッカー”を語り続けている。W杯やユーロ(欧州選手権)をはじめオランダリーグ、ベルギーリーグ、ドイツ・ブンデスリーガなどを現地取材、リポートしている

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