攻守に不安定な王者に忍び寄る危機=クロアチア 0−1 スペイン

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結果だけはしっかり手にしたが

数々の好セーブでチームを救ったカシ―ジャス。スペインはPKが見逃されるなど、運も味方した 【Getty Images】

 一方、スペインは相変わらずボールは支配しているものの、肝心の決定的なシュートを打つほどに深く攻め込むことができない。それは2009年6月以降、代表では2試合連続でゴールを決めたことがないフェルナンド・トーレスに代わってヘスス・ナバスを右サイドに投入した後も、運動量の落ちたダビド・シルバに代えて2試合連続ゴール中のセスク・ファブレガスを入れた後も変わらなかった。

 しかも時折生じるボールロストからカウンターを許すたび、最終ラインは慌てた対応を見せる。79分にはセンターバック2人が3人のアタッカーによる速攻にさらされ、ペリシッチにフリーでフィニッシュに持ち込まれた。87分のCKではセルヒオ・ブスケッツがヴェドラン・チョルルカを引っ張り倒すも、再びPKは見逃された。

 攻守に不安定な世界王者の姿が、徐々にスタンドのスペインファンには不安を、クロアチアのファンには希望を与えていく。ただスコアは0−0のままであり、依然として優位な立場にあるのはスペインだった。

 残り10分を切り、ビリッチは中盤の守備の要であるオグニェン・ブコエビッチを下げ、FWのエドゥアルド・ダ・シウバを投入する。しかし、結果的にさい配が当たったのはデルボスケの方だった。

 88分、DFラインの裏へ抜け出したアンドレス・イニエスタへ、セスクの浮き球パスが通る。イニエスタが胸でのコントロールから右側へ流すと、最後は並走したナバスが無人のゴールに先制点を蹴り込んだ。結局これがこの日生まれた唯一のゴールとなった。

 万策尽くし、ラストワンプレーまで勝ち抜けの可能性を探り続けたクロアチアに対し、スペインは攻守ともに煮え切らない内容ながらも、結果だけはしっかり手にした。それをポジティブにとらえることも可能ではあるが、カシージャスの好セーブ、そしてスペインが2度の明らかなPKを見逃されたことは忘れてはならないだろう。

 両チーム間にある確固たる実力差を示すことができず、個々のタレントと少々の運を駆使してぎりぎりの勝利を収めたスペイン。これで目を覚ましてくれれば良いのだが、これ以上もたついているようだと危ないかもしれない。

<了>

文/工藤拓、提供/WOWOW

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