国民の期待に応えたポーランドの勇気に拍手=ポーランド 1−1 ロシア

後藤健生

見違えるような猛反撃を見せたポーランド

アルシャビン(赤)を中心に攻め込んだロシアだったが、追加点を奪うことができなかった 【Getty Images】

 1点をリードしたロシアは、気持ちに余裕が生まれたのか、ポジションチェンジが増え、また、パスコースの変化も大きく、完全にゲームを支配。数多くのチャンスが生まれたのだが、得点は結局FKからの1点のみに終わってしまう。ロシアとしては、前半のうちに2点目を奪えなかったことが、痛恨事となった。

 一方、前半の30分以降のポーランドは完全に劣勢に陥ってしまっていた。このまま、ズルズルと敗れてしまうのか……。そんな不安な空気がスタジアムを包む。
 だが、国家分割のあの苦難の時代に作られた国歌の一節には「ポーランド、未だ滅びず」とある。そして、後半のポーランドは、その歌詞の通りに見違えるような猛反撃を見せたのである。

 ドゥドカをアンカーに置いた前半の4−1−4−1は守備的で、ロシアの猛攻を受け止めるための消極的な布陣と見えたが、後半に入ると両サイドバック(ボエニシュとピシュチェク)の攻撃参加も含めて、選手たちの気持ちが積極的になった。まず、パスを前線の選手に付けて、周囲が呼応して攻撃に参加してチャンスにつなげ始めたのだ。戦術などよりも、その気持ちの強さこそが前半からの流れを変えることができた最大の理由だろう。
 そして、57分。ついに、ポーランドが追いつき、場内は興奮に包まれる。

 右サイドでフリーになったピシュチェクからの早いタイミングの縦パスを受けたブワシュチコフスキが見事なファーストタッチで中に切り返し、そのままファーサイドのゴールネットに左足で強烈なシュートを突き刺した。まさに、ポーランドらしい速攻だった。

 同点としたポーランドは選手交代も含めて、その後も猛攻を仕掛け続ける。70分を過ぎるとロシアの選手たちに疲労の色が濃くなり、足が止まり始めた。

 もちろん、ポーランドにも疲れはあったことだろう。だが、大観衆が大きな声で国歌を歌って選手たちに力を与え続けた結果、ポーランドの選手たちの気持ちは最後まで折れることなく、「あと一歩」までロシアを追い詰めた。

 勝ち点を4まで伸ばしたロシアはグループリーグ勝ち抜けに一歩近づいた試合だったが、格下と思われたポーランドに追い込まれたことも含めて、かなりの疲労をため込んだことだろう。一方、2試合連続で引き分けに終わったものの、ポーランドも最終戦でチェコに勝てば準々決勝進出が決まる状況になった。ロシア戦のような気持ちの強さを持って臨めば、勝利は十分に期待できる。

 東欧圏同士の厳しい戦いとなったグループAからは、最後まで目が離せない。

<了>

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著者プロフィール

1952年東京生まれ。慶應義塾大学大学院博士課程修了(国際政治)。64年の東京五輪以来、サッカー観戦を続け、観戦試合数はまもなく4800。EURO(欧州選手権)は1980年イタリア大会を初めて観戦。今回で7回目。ポーランドに初めて行ったのは、74年の西ドイツW杯のとき。ソ連経由でワルシャワに立ち寄ってから西ドイツ(当時)に入った。

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