なぜ今、J2クラブに注目するのか?=J2漫遊記 第1回・FC岐阜編

宇都宮徹壱

日本サッカーのピラミッドにおけるJ2の位置付け

2年ぶりの連勝ならず、100試合目の染矢も決定機を逃したことで、岐阜サポーターの落胆は大きかった 【宇都宮徹壱】

 いささか前置きが長くなった。実は今回からスポーツナビにて、J2クラブの連載を開始する。あるいは「宇都宮がJ2?」と意外に思われる方もいらっしゃるかもしれない。念のために説明しておくと、私はこれまでJリーグよりも下のカテゴリーであるJFLや地域リーグを主戦場として取材してきた。J1の優勝争いや、J2から昇格するチームが決まる日に、あえて全国地域リーグ決勝大会(地域リーグからJFLに昇格するチームを決める大会)やJFLの最終節を優先させたことも何度かあった。

 しかし、だからといってJリーグを軽んじていたわけではなく、むしろ地域リーグからの「卒業生」たちのことは、それなりに気にしてはいた。と同時に私は、日本サッカー界のピラミッドの完成が、今後どのような影響を及ぼすかについても、ここ数年はずっと注視してきた。Jリーグが2部制となった99年、J2は当時のJ1より6チーム少ない10チームからスタートしている。J2がJ1と同じチーム数(18)に追いついたのは09シーズン。そしてようやく今季、Jリーグは1部18チーム、2部22チームとなり、J2とJFLとの入れ替えがスタートすることで、日本サッカー界のピラミッドはついに完成形を見ることとなった。

 ここで私が注目するのが、このピラミッドにおける「J2のあり方」である。地域リーグやJFLを取材してきた私にとって、J2とはまさに「約束の地」というイメージが強い。ところがJ1のクラブにしてみれば、J2への降格は、それこそ「この世の終わり」のような認識があるようだ。この「約束の地」と「この世の終わり」という2面性を併せ持ちながら、J2というカテゴリーは毎年のように所属クラブ数を増やしてゆき、ついに22チームで満席となったのである。

J2とは「Jリーグのお荷物」なのか?

 今年、Jリーグは20シーズン目を迎えた。開幕記念日である5月15日は、さまざまなイベントが行われ、専門メディアも祝賀ムード一色という感があった。とはいえ、晴れやかな舞台裏では、一向に減らない赤字クラブや入場者数の減少など、問題や課題は山積したままだ。そうしたJリーグの影の部分にクローズアップする際、決まって取り上げられるのが地方のJ2クラブである。せっかく理想に燃えてJ2まで昇格したのに、たまに全国メディアで取り上げられると思ったら「Jリーグのお荷物」的な扱いで報じられる。クラブ関係者であれ、サポーターであれ、当事者の落胆はいかばかりであろうか。

 日本サッカーのピラミッドにとって、J2は本当に「お荷物」なのだろうか。あるいは第三者にとって、J2は本当に魅力に乏しいコンテンツなのだろうか。私がJ2クラブを追いかけようと思ったのは、まさにそうした素朴な疑問が起点となっている。

 確かに、J2の22位対14位の試合を見て、面白いコラムを書くというのは容易ではない。とはいえJ2クラブについて、単に成績不振や経営難といった切り口だけで語るのも、あまりフェアではないと思う。むしろ、経営や戦力だけでは語り尽くせない「J2クラブの存在意義」について、少し引いた(それこそよそ者の)視点で考察するのも、書き手のアプローチとして十分に「あり」なのではないか。

 そんなわけで、この「J2漫遊記」という連載をスタートさせようと思う。第1回の訪問地は岐阜。なぜ岐阜を選んだのかについては、次の回で詳しく語ることにしたい。不定期な連載となるが、その都度お付き合いいただければ幸いである。

<了>

(協力:Jリーグ)

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著者プロフィール

1966年生まれ。東京出身。東京藝術大学大学院美術研究科修了後、TV制作会社勤務を経て、97年にベオグラードで「写真家宣言」。以後、国内外で「文化としてのフットボール」をカメラで切り取る活動を展開中。旅先でのフットボールと酒をこよなく愛する。著書に『ディナモ・フットボール』(みすず書房)、『股旅フットボール』(東邦出版)など。『フットボールの犬 欧羅巴1999−2009』(同)は第20回ミズノスポーツライター賞最優秀賞を受賞。近著に『蹴日本紀行 47都道府県フットボールのある風景』(エクスナレッジ)

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