若手とベテランがうまく融合した女子代表 田中、美濃部らが出場権を獲得=体操

矢内由美子

3位には最年少の寺本、4位はけが明けの鶴見

「緊張していた」と語った寺本だが、代表の中で最年少での五輪出場を決めた 【坂本清】

 全体の3位で代表入りしたのは16歳の寺本明日香(レジックスポーツ)だ。寺本は高難度の技と、度胸が持ち味の高校2年生。今回の体操競技の代表では男女を通じて最年少である。

 一見すると肝っ玉が据わっているように見えるが、本人いわく、「見た目以上に緊張している」とのこと。NHK杯2日目の段違い平行棒の演技前には、緊張のあまり、アップをしている最中から両ひじから下がしびれていたほどで、「こんなに緊張したことは今までになかった。でも、そこで2回深呼吸をしたら治った」と、どうにか演技を成功させ、昨年の世界選手権に続く日本代表入りを果たした。

 4番手の鶴見虹子(日体大)に関しては、本来ならこの順位にいるような選手ではない。ところが、練習環境の変化と左手甲の骨折が重なった今年の初旬に満足のいくような練習できなかったのが響き、4月の全日本選手権で7位、NHK杯初日6位というまさかの成績で最終日を迎えた。ただ、そこからの巻き返しはさすがだった。最後は順当に五輪代表切符を手に入れた。

 今年3月から指導している日体大の瀬尾京子コーチによると、「(4月の)全日本選手権前は、NHK杯に進めないかもしれないとすら思った」というほどだったそうだが、毎日の25分間ランニングで体をしぼりながら体力をつけ、最後はしっかりと五輪圏内に入ってきた。

「こんなにギリギリの戦いをしたことがなかったので疲れた。でも、自分が普通にちゃんとやれば五輪には行けると思ってやっていた。自分を信じて思い切ってできたので良かった」と矜持(きょうじ)をのぞかせた。

 鶴見の場合、負傷が癒えてくれば取り戻すことのできる技が既にいくつかあるのが強みだ。そのひとつは段違い平行棒のひねり技。もう一つはゆかのシリーズを今回の3本から従来の4本に戻すこと。「チームに迷惑をかけないように頑張りたい。今はまだ70パーセントだけど五輪では100パーセントで戦いたい」と意欲的に話していた。

笹田の追撃をかわし、新竹が5位に

熾烈な5位争いを制した新竹。大胆さが結果につながった 【坂本清】

 最後の1枠となる5番手争いはまさに熾烈(しれつ)だった。最終種目のゆかを迎える前、5位にいた新竹優子(羽衣学園)と6位の笹田夏実(帝京高)の点差はわずか0.2。結果として少しのミスが運命を分けることになり、ノーミスの新竹が、ラインオーバーをしてしまった笹田の追撃をかわしてロンドン五輪への切符を手に入れた。

 新竹は北京五輪続いて2度目の五輪。2つ目の種目の段違い平行棒で足をバーに当ててしまうミスがあったが、「落ち込んでいたらそこで終わってしまう。最後のゆかは冷静に、でも大胆にいかないとと思ってやった」と精神力の強さを存分に発揮しての五輪出場権獲得だった。

 今回の日本女子は、16歳の寺本から24歳の田中まで幅広く、若手の勢いとベテランの落ち着きがうまくミックスされたチームになった。また、五輪2度目が3人、初出場が2人ということで、経験を生かした試合ができるであろうこともプラス材料である。日本女子の目標である表彰台、あるいは5位以内の好成績を収めるため、5人で力を合わせて突き進んでいくことに期待したい。

<了>

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著者プロフィール

北海道生まれ。北海道大卒業後にスポーツニッポン新聞社に入社し、五輪、サッカーなどを担当。06年に退社し、以後フリーランスとして活動。Jリーグ浦和レッズオフィシャルメディア『REDS TOMORROW』編集長を務める。近著に『ザック・ジャパンの流儀』(学研新書)

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