「信じられない」ビートブラック“一か八か”の大激走V=天皇賞・春
14番人気の石橋脩&ビートブラックがまさか、まさかの天皇賞・春V 【スポーツナビ】
ビートブラックは今回の勝利でJRA通算28戦6勝、重賞は初勝利。騎乗した石橋脩はうれしいGI初勝利となり、同馬を管理する中村均調教師は天皇賞・春は初制覇、JRA・GIはマイネルマックスで制した1996年朝日杯FS以来16年ぶりの通算3勝目となった。
一方、単勝1.3倍の支持を集めていた池添謙一騎乗の1番人気オルフェーヴル(牡4=栗東・池江厩舎)は末脚不発に終わりまさかの11着惨敗。
ビートブラックから4馬身差の2着には岩田康誠騎乗の3番人気トーセンジョーダン(牡6=栗東・池江厩舎)、さらに2馬身差の3着に武豊騎乗の2番人気ウインバリアシオン(牡4=栗東・松永昌厩舎)が入った。
「自分が思い切って行けば何かが起きるかもしれない」
盾男・武豊(右)も大金星に導いた石橋脩を祝福 【スポーツナビ】
「一か八か、でしたね。これで最後バテたら謝るしかないと」
レースは最内1枠1番からポンとゲートを出てハナへ。1周目の下りから同じく人気薄のゴールデンハインドがハナを主張したため、これに譲って2番手から快調にラップを刻んだ。
「枠もいいところでしたし、今の京都は時計が速い。そうそう簡単には止まらないだろうと思っていたので、何頭かで離して行って、後続が構えてくれればなと思っていました。自分が思い切って行けば何かが起きるかもしれない、と」
ゴールデンハインド、ビートブラック、そしてナムラクレセントが後続を離して逃げる形となり、これは石橋脩がイメージしていた“理想”の展開。さらに、「2番手でこのまま行っても仕方ない」と、3コーナー坂の下り、残り1000メートル手前から勝負の超ロングスパートに打って出た。
「オルフェーヴルとか他の馬はまったく気にしていませんでした。とにかく自分の競馬をしようと。でも、仕掛けてからの手応えはすごいありましたね。1000メートルから行っているんですけど、余力もありましたし、それだけ調子が良かったんでしょう」
レース前と本番、2つの“ギャンブル”が春の盾を引き寄せた
伝統の淀3200mで個性派チャンピオンが誕生、今後のGI戦線をさらに面白くしてくれそうだ 【スポーツナビ】
「今回はオルフェーヴルをはじめ強い馬が何頭もいるし、どうせ敵わないかなと思っていた。でも、逆にそれだったらGIなんだし、究極の仕上げをしてみようと。それで2週続けてビッシリやってみたら、水曜の最終追い切りは想像以上にものすごく動きましたね。最高の状態になった。思い切ってやってみて良かったですよ」
2週続けてのハードトレは、一歩間違えれば故障にもつながる一種の賭け。それを克服して手に入れた“究極の出来”が勝利をグッと引き寄せたわけだ。
そして、ハードトレがギャンブルなら、テン乗りながら石橋脩の度胸満点の超ロングスパートも「一か八か」の大バクチ。四冠馬ら強力ライバル勢を打ち負かしたというよりも、レース前と本番のこの2つの大勝負に打ち勝った末の、春の盾奪取だった。
「今日はうまくハマったのも大きいと思いますが、GIを勝つのは並大抵のことではないですからね。今後も期待したいですね」
石橋脩がこう語れば、中村均調教師も「逃げてラッキーのように思われるかもしれませんが、良馬場でしたし、ディープインパクトの時計に0秒4まで迫る速いタイムですからね、力で勝ったと思いますよ。今後は色んな選択肢がありますし、明るい道が開けてきましたね」と、さらなる活躍に太鼓判。ただ、まさか勝つとは思わなかったので、と今後の目標レースは未定とのことだ。
伝統の淀長距離戦で誕生した新王者ビートブラック。この個性派ホースの存在が、これからの古馬GI戦線を一層面白くしてくれそうだ。