「信じられない」ビートブラック“一か八か”の大激走V=天皇賞・春

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14番人気の石橋脩&ビートブラックがまさか、まさかの天皇賞・春V 【スポーツナビ】

 伝統の春最強馬決定戦、第145回GI天皇賞・春が京都競馬場3200メートル芝を舞台に争われ、石橋脩騎乗の14番人気ビートブラック(牡5=栗東・中村均厩舎、父ミスキャスト)が思い切った積極先行策で大駆けV。見事、初の古馬ビッグタイトルを手に入れた。良馬場の勝ちタイムは3分13秒8。14番人気での勝利は、春の天皇賞史上最も人気薄での勝利となった。
 ビートブラックは今回の勝利でJRA通算28戦6勝、重賞は初勝利。騎乗した石橋脩はうれしいGI初勝利となり、同馬を管理する中村均調教師は天皇賞・春は初制覇、JRA・GIはマイネルマックスで制した1996年朝日杯FS以来16年ぶりの通算3勝目となった。

 一方、単勝1.3倍の支持を集めていた池添謙一騎乗の1番人気オルフェーヴル(牡4=栗東・池江厩舎)は末脚不発に終わりまさかの11着惨敗。
 ビートブラックから4馬身差の2着には岩田康誠騎乗の3番人気トーセンジョーダン(牡6=栗東・池江厩舎)、さらに2馬身差の3着に武豊騎乗の2番人気ウインバリアシオン(牡4=栗東・松永昌厩舎)が入った。

「自分が思い切って行けば何かが起きるかもしれない」

盾男・武豊(右)も大金星に導いた石橋脩を祝福 【スポーツナビ】

 まさか、まさかの大逃走。一昨年の菊花賞3着という実績は持っていたものの、中村均調教師は「信じられない」と何度も繰り返した。殊勲の手綱を握った石橋脩も、してやったりというよりは、いまだ信じられないといった表情で振り返る。
「一か八か、でしたね。これで最後バテたら謝るしかないと」

 レースは最内1枠1番からポンとゲートを出てハナへ。1周目の下りから同じく人気薄のゴールデンハインドがハナを主張したため、これに譲って2番手から快調にラップを刻んだ。
「枠もいいところでしたし、今の京都は時計が速い。そうそう簡単には止まらないだろうと思っていたので、何頭かで離して行って、後続が構えてくれればなと思っていました。自分が思い切って行けば何かが起きるかもしれない、と」
 ゴールデンハインド、ビートブラック、そしてナムラクレセントが後続を離して逃げる形となり、これは石橋脩がイメージしていた“理想”の展開。さらに、「2番手でこのまま行っても仕方ない」と、3コーナー坂の下り、残り1000メートル手前から勝負の超ロングスパートに打って出た。

「オルフェーヴルとか他の馬はまったく気にしていませんでした。とにかく自分の競馬をしようと。でも、仕掛けてからの手応えはすごいありましたね。1000メートルから行っているんですけど、余力もありましたし、それだけ調子が良かったんでしょう」

レース前と本番、2つの“ギャンブル”が春の盾を引き寄せた

伝統の淀3200mで個性派チャンピオンが誕生、今後のGI戦線をさらに面白くしてくれそうだ 【スポーツナビ】

 淀の長距離レースでは常識破りとも言われる、坂の下り手前からのスパート。これを成功させた一番の要因は、鞍上も触れた“出来の良さ”にあった。中村均調教師が明かす。
「今回はオルフェーヴルをはじめ強い馬が何頭もいるし、どうせ敵わないかなと思っていた。でも、逆にそれだったらGIなんだし、究極の仕上げをしてみようと。それで2週続けてビッシリやってみたら、水曜の最終追い切りは想像以上にものすごく動きましたね。最高の状態になった。思い切ってやってみて良かったですよ」

 2週続けてのハードトレは、一歩間違えれば故障にもつながる一種の賭け。それを克服して手に入れた“究極の出来”が勝利をグッと引き寄せたわけだ。
 そして、ハードトレがギャンブルなら、テン乗りながら石橋脩の度胸満点の超ロングスパートも「一か八か」の大バクチ。四冠馬ら強力ライバル勢を打ち負かしたというよりも、レース前と本番のこの2つの大勝負に打ち勝った末の、春の盾奪取だった。

「今日はうまくハマったのも大きいと思いますが、GIを勝つのは並大抵のことではないですからね。今後も期待したいですね」
 石橋脩がこう語れば、中村均調教師も「逃げてラッキーのように思われるかもしれませんが、良馬場でしたし、ディープインパクトの時計に0秒4まで迫る速いタイムですからね、力で勝ったと思いますよ。今後は色んな選択肢がありますし、明るい道が開けてきましたね」と、さらなる活躍に太鼓判。ただ、まさか勝つとは思わなかったので、と今後の目標レースは未定とのことだ。

 伝統の淀長距離戦で誕生した新王者ビートブラック。この個性派ホースの存在が、これからの古馬GI戦線を一層面白くしてくれそうだ。

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