勝負の3年目に自信見せる可夢偉、飛躍のシーズンとなるか F1=16日開幕、2012年シーズン展望

田口朋典

マシンの仕上がりは上々、評価高いザウバー

勝負の3年目に臨む小林可夢偉。トップチームへのステップアップに向けて重要な1年となりそうだ 【写真:ピレリ】

 そんな今季で台風の目となりそうなのが、日本期待の小林可夢偉を擁するザウバーだ。2月に行われたバルセロナでの合同テストでは、可夢偉がニューマシンC31を駆り、堂々の総合トップ。1週間後、同じバルセロナでの最終合同テストでは、僚友セルジオ・ペレスも総合2番手となった。もちろんオフのテストでは、チームによって燃料の搭載量やテストメニューが異なるので、タイムを単純に評価することはできない。しかし、ベッテルやジェンソン・バトン(マクラーレン)といった一流ドライバーが、「ザウバーは良い仕事をして来たようだ。注意すべき存在になるだろう」とそろって同様の趣旨の発言をしていることからも、C31のスピードにはパドックでも注目が集まっている。

 ときとしてスピードがあっても、信頼性不足に泣かされることもあったザウバー。最初のテストが行われたヘレスでは多少トラブルも出たが、その後は順調にプログラムを消化した。今季のC31は3回のプレシーズンテストで1000ラップ以上をこなし、最終的には約5000キロを走り込んだ。これはウィリアムズ、フェラーリに次ぐ3番目の走行距離に当たる。少なくとも、現時点でのC31には一定レベル以上の信頼性が備わっていることは間違いないようだ。

自信を見せる可夢偉、安定した戦いができるか

 こうした状況を受けて、可夢偉も「シーズンオフのテストは自信の持てるものだった」、「明日レースになっても問題ない」などと、ポジティブなコメントを口にし、ザウバーでの3年目のシーズンに向けた大きな自信をうかがわせている。チームの総帥ペーター・ザウバーも、C31のエキゾースト・システムと同様のものをテスト終盤にレッドブルが採用してきたことを「我々の方向性が正しいことが確認されたようなもの」と喜び、「今季はさらにコンストラクターズランキングで上位を狙う」と開幕を前に鼻息は荒い。

 フジテレビはFOM(F1運営会社)と2年契約を結んだものの、地上波中継を取りやめ、BSとCSへと放送形態が移管されるなど、必ずしもいいニュースばかりではない国内F1シーン。それだけに、今年も孤軍奮闘となる可夢偉には好調なオフの流れのままに開幕戦を戦ってもらいたい。過去2年、好不調の波があり浮沈のあるシーズンを戦っただけに、可夢偉も「一番の目標は、今年はこれまでよりも、もっと安定した力を発揮すること。コンスタントにベストのポテンシャルを発揮すれば、コンスタントにポイントが獲れるはず」と意気込みを語る。

 昨年はポイント圏内(8位)でフィニッシュも、まさかの車両違反で失格という波乱の開幕戦となった。だが、さらなる成長を遂げた可夢偉にはオーストラリアでC31の好調さをいかんなく発揮してもらい、今年こそ最高の開幕ダッシュを期待したい。

<了>

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著者プロフィール

1966年生まれ。大学卒業後、趣味で始めたレーシングカートにハマり、気がつけば「レーシングオン」誌を発行していたニューズ出版に転職。隔週刊時代のレーシングオン誌編集部時代にF1、ル・マン、各種ツーリングカーやフォーミュラレースを精力的に取材。2002年からはフリーとなり、国内外の4輪モータースポーツを眺めつつ、現在はレーシングオン誌、オートスポーツ誌、CG誌等に執筆中。自身のブログ“From the Paddock”(スポーツナビ+ブログで)では、モータースポーツ界の裏話などを披露している

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