FC東京、“魅せる”サッカーで旋風を=J2で身に付けた自信とたくましさを武器に
ポポヴィッチ監督が課した“縛り”
大宮戦は疲労の影響からか選手の連動が少なく苦戦したが、1点を守り抜く手堅さを見せた 【写真は共同】
富士ゼロックス・スーパーカップ(以下、ゼロックス杯)を2日後に控えた時点で、MF高橋秀人は「パスを回すことはできているが、それ以外に手つかずの部分が多く不安」だと言っていた。
どういうことか。
元日までプレーし、ゼロックス杯で新シーズンを迎えたFC東京は、ほかのどのJ1クラブよりも始動日から公式戦までの間隔が短かった。おそらくそのためだろう、ポポヴィッチ監督は目指すサッカーを意識付けるべく“縛り”を強調し、ワンタッチのパス回し、縦にくさびを入れて3人目が裏へ走り込む動き、連動の仕方など、ある程度の型にはめる練習を多く行ってきた。
また、ポポヴィッチ監督は「ボール保持者は自分よりもゴールできる確度の高いフリーの仲間にパスを出すべき」という思想を持っている。そのため、むやみにシュートを打つ、ゾーンに関係なくドリブルを始める、といったプレーは怒声の対象となる。練習試合に途中から出た河野広貴は、ピッチに入った直後、中盤でドリブルを始めたとたんに怒鳴られていた。
最終的には点を取って勝つことが目的だから、必ずしも自分でやるのがダメというわけではないが、ともかくこうした促成栽培のおかげで、主導権を握るためのパスワークがゼロックス杯までに浸透した。反面、それ以外の部分はあまり進んでいない。それが高橋の言っていたことだ。
味スタのカンプ・ノウ化も?
2冠(J2と天皇杯)を達成した監督を替え、明治神宮や都民広場で行事を催すなど、変わる姿勢をクラブは示している。その先には、踊り場を迎えた観客動員数を再び右肩上がりにし、ホームである味の素スタジアムを満員にするという目標がある。達成にはクラブ自身の努力が不可欠だが、現場が常に主導権を握る魅力的なサッカーを実践するのであれば、それがなによりの営業ツールになる。権田はブリスベン戦後にこう言っていた。
「今年はゲームで魅せて、お客さんのハートをつかむということをやり続けたい。味スタが(チケット売り切れで)入れなくてたいへんだ、となることが、僕の1番大きな理想であり目標なので」
その日は案外近いのではないか。まさかの、味スタ≒カンプ・ノウ(バルセロナの本拠地)化。しかし、まずはACLで、かつてのガンバ大阪に代わる位置につけてほしいと思う。今のFC東京には、そのくらい期待しても罰は当たらない。
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