すでに始まったソチ五輪への序章 ロシア、米国からメダル候補続出=フィギュア・世界ジュニア女子シングル
左から、銀メダルのゴールド(米国)、優勝したリプニツカヤ(ロシア)、銅メダルのソトニコワ(ロシア)。フィギュア大国の層の厚さを見せつけた 【森美和】
「アイロン・ウーマン」の誕生とロシア女子の激戦化
3位になったソトニコワが、すべての要素をノーミスでこなしたリプニツカヤを評して口にした言葉だ。シニアに上がったソトニコワは今季、ジャンプのミスが目立つ。今大会でも、ショート3位になるとショックのためにテレビインタビューを拒否。銅メダリストとなっても笑顔はなく、苦し紛れに答えたのはこんな風に自分を卑下する言葉だった。
ソトニコワがこんなにも苦しむのは、ロシア女子にとって2014年ソチ五輪の代表選考が、もう実質的に始まっているからだ。自国開催の五輪をめざし、メダル候補級の選手が雨後のたけのこのように登場している。
昨季世界ジュニア銀メダルのエリザベータ・トゥクタミシェワは、今季のグランプリ(GP)シリーズで2連勝し見事なシニアデビューを飾った。ニコライ・モロゾフに師事するアリーナ・レオノワはGPファイナルで3位。ジュニアのポリーナ・シェレペンはジュニアGPで2連勝。ロシア国内選手権では、ソトニコワが意地の優勝を果たしたものの、今年1月のユース五輪ではトゥクタミシェワが金、ソトニコワが銀。ロシア女子たちは国際大会の場で、壮絶な国内ランキング争いを繰り広げている。
そこに、さらなる「五輪金メダル候補」として舞い降りたのが、リプニツカヤ。ソトニコワの警戒心も無理はない。五輪出場枠は3枠しかないのだ。
リプニツカヤ、驚異の180度超え開脚 高難度のジャンプ力を示したソトニコワ
今季ジュニアで無敗のリプニツカヤ(ロシア)。今大会でもシニアに匹敵する高得点をマークして優勝を飾った 【森美和】
「本当に理想的な演技ができました。まさか優勝するなんて思っていなかったので、得点を見てもボーっとしてしまいました。まだ取材を受けるのは慣れていないし緊張します」とシャイな一面を見せながらも、「夢はソチ五輪に出場すること」と言い切った。
もちろんソトニコワの演技も素晴らしいものだった。ショートでは「トリプルトゥループ+トリプルトゥループ」を、フリーでは難度の最も高い「トリプルルッツ+トリプルループ」を成功させた。スピードも昨季より増して、シニアの滑りへと変化している。
「ミスはあったけれど、私は難度の高いジャンプがちゃんとできるということは証明できました」とソトニコワ。トリプルアクセルの可能性について聞かれると、リプニツカヤとゴールドが「まだ全然」と答えたのに対し、「練習では降りたわ! ちょっと回転不足だけど」とアピールする場面も。ロシアの国内女王には、危機感が見え隠れした。
2人の影で注目が低かったポリーナ・シェレペンも、ショートはミスがあったものの、フリーは「トリプルルッツ+トリプルトゥループ」と「トリプルサルコウ+トリプルトゥループ」を成功し4位、総合6位につけ、存在感を示した。