金哲彦氏が語る「文化としてのスポーツ」
再出発の際にNPO法人を選んだ2つの理由
NPO法人「ニッポンランナーズ」を設立し、幅広い年代の人々にスポーツの魅力を伝えている 【スポーツナビ】
――選手が成長していくにはコーチの力が大きいのでしょうか、選手の力が大きいのでしょうか?
両方だと思います。スポーツでどんなに優れた選手がいても、しっかり導かないと伸びていきません。素質があることも必要ですし、能力がある、情熱があるコーチも必要だと思います。
ただ、川内(優輝/埼玉県庁)君はコーチがいなくて一人でやっています。彼は今までマラソンにはいなかったタイプの選手ですね。五輪代表候補になっていますから、すごいなと思います。
――ラグビーでも陸上でも、世界と戦う上で体格の違いをどう克服すべきでしょうか?
陸上界ではアフリカ勢に勝てなくなってしまいました。フィジカルの差が出ています。体格の特徴的にはひざから下が細くて、骨盤が前傾していて、走ることにすごく適した骨格なんです。そして、子どものころから5キロも10キロも走ってますから日本の環境とは違いますね。
ラグビーのことは私が語るのは難しいのですが、優秀な素質を持った子どもたちにラグビーをさせるのはひとつの方法だと思います。野球やサッカーではなく、身体能力の高い子どもにラグビーを選ばせる。そのためにはヒーローが必要ですし、魅力があるスポーツになることが大事だと思います。
――再出発の際に株式会社ではなく、NPO法人を選んだ理由は?
明確な理由が2つあります。ひとつは株式会社の存在意義は株主のためにあるので、もうからないと続けられないということです。投資をしてくれた人にリターンをする必要があるので。私たちは、もうからなくてもスポーツをキーワードにしてずっと続けていくことが目的ですから、NPOの仕組みの方がふさわしかったので決めました。
ふたつ目の理由はサッカーくじの「toto」の補助金をもらえたからです(笑)。これは現実的な話です。総合型スポーツクラブを設立するにあたって「toto」の補助金をいただけました。それを原資として運営をしていますので、それが大きな理由になりました。
――地域スポーツクラブをつくろうという話が途中で止まってしまうケースが多いのですが?
これは残念ながら全国各地で起きています。総合型地域スポーツクラブは、行政主導で一時的にお金を出すだけでは続かないんです。会費を取らない形では2年目から予算が切れればできなくなるからです。
NPOは存在意義が社会貢献なんですが、会社組織と同じようにお金が回る仕組みをつくっています。会費もとって、それに見合う仕組み、コーチングをつくっていく。それが大事なんです。そのためには専任スタッフが必要です。総合型スポーツクラブを運営するには彼らがいないとできませんから。そういう仕組みをつくって、情熱のある若いスタッフに託していかないと、なかなか続かないと思います。
<了>
金哲彦氏に聞く「あなたにとってラグビーとは」
2016年には五輪で7人制ラグビーも正式種目になりますし、19年には日本でW杯が開催されます。ここで一気に普及して盛り上がっていくといいと思いますね」
協力:(公財)日本ラグビーフットボール協会