和泉竜司、市船を優勝に導いた主将の矜持=起死回生のゴールで見せた成長の跡
沖縄の地で神懸かり的な活躍を披露
決勝で2ゴールを挙げた和泉が、市立船橋を5度目の優勝に導いた 【鷹羽康博】
起死回生の同点弾でチームを生き返らせた和泉は、延長後半5分にも見事なボールタッチから右足を一閃。放たれた弾丸ライナーはGKの手をはじき、ゴールに突き刺さった。自身今大会5得点目は、市船の5度目の選手権制覇を決定づけた。
大会前から注目選手として名前こそ挙がっていたが、正直なところ、和泉のここまでの活躍は予想していなかった。なぜならば、彼はゴールから遠ざかっていたからだ。
彼の名が強烈に頭に刻まれたのは、2010年の沖縄インターハイだった。この大会での和泉はまさに神懸かり的な活躍を見せている。
山梨学院大附との3回戦。彼はそれまで不動のレギュラーという存在ではなく、ベンチを温めることも多かった。しかし、「技術的に高くて、左右両足が蹴れて、判断良くパスも出せる。ここに期待をして起用した」と石渡靖之前監督は先発に抜てきした。
「これまでは点を取りたい気持ちが空回りしてしまっていた。ゴール前で焦ったり、うまくいかなかった」と、点が取れない自分に焦りを感じていた時に、与えられたチャンス。この好機を彼は見事に生かした。
7ゴールで得点王に輝く
開始早々の3分にペナルティーエリア外から、目の前で大きくバウンドする難しいクロスボールにうまく合わせ、左足で矢のようなダイレクトボレーを放つ。これがゴールに突き刺さり、会場のどよめきを誘った。その後、スライディングシュートで2点目を挙げると、今度はゴールまで約40メートルの位置から目の覚めるような弾丸ミドルシュートを左隅にたたき込む。2年生ストライカーが見せた圧巻のハットトリックだった。
桐光学園との準決勝では、0−0で迎えた試合終了間際に、MF菅野将輝の左CKをどんぴしゃのヘッドで合わせ、値千金の決勝ゴール。チームを決勝まで導いた。
そして迎えた滝川第二との決勝戦では、0−1の苦しい展開で迎えた後半25分に菅野のパスから起死回生の同点ゴール。1−1でもつれ込んだ延長戦では、追いついた勢いそのままにチームは3点をたたき出して、見事に全国優勝を飾った。
和泉は4試合連続の7ゴールで得点王に輝いた。これまで埋もれていたストライカーが一気に日の目を見た瞬間だった。