スーパーボウルを制するのは?=NFLプレイオフ展望

NFL JAPAN/生沢浩

AFCで光るペイトリオッツの安定感

昨季に続く連覇を狙うパッカーズ 【AP Images/NFL JAPAN】

 今年のプレイオフは過去11年間にスーパーボウルを制した8チーム(ペイトリオッツは3回、スティーラーズは2回優勝)のうち、6チームが含まれる豪華な顔ぶれとなった。AFCではペイトリオッツ、レイブンズ、スティーラーズら常連組に加えてテキサンズが創設以来初めてとなるプレイオフ出場。2年連続でスーパーボウル覇者を輩出しているNFCでは12年ぶりのポストシーズンを迎えるライオンズ、9年ぶりの49ersの参戦が話題だ。

 AFCでは8連勝でレギュラーシーズンを終えたペイトリオッツの安定感が光る。ディフェンスの弱さが折に触れて指摘されるが、第16週のドルフィンズ戦で0対17、最終週のビルズ戦で0対21の劣勢をひっくり返したチーム力は称賛に値する。序盤で大量リードを奪えば相手にキャッチアップオフェンスを強いて、試合を有利に運ぶことができるというのがフットボールのセオリーだが、ペイトリオッツにはそれが通用しない。

 第2シードのレイブンズは、ディビジョナル・プレイオフをホームで戦えるのが有利。ジョン・ハーボーのHC就任以来、過去3年はいずれもワイルドカードでのプレイオフ出場のためホーム開催権を持たなかった。今季はホームゲームで全勝しているだけに12年ぶりのスーパーボウル出場に向けて機運が高まっている。

 テキサンズはエースQBマット・ショーブの不在(故障で今季絶望)が痛い。新人QBのT.J.イエーツに委ねなければならないため、大舞台での経験不足が懸念される。RBアリアン・フォスターを中心としたリーグ2位のランオフェンスと、やはりリーグ2位のディフェンスで接戦に持ち込みたい。
 そのテキサンズと1回戦で対戦するベンガルズはパスラッシュが強力で、イエーツを混乱させにくるだろう。こちらもQBは新人のアンディ・ダルトンだが、開幕から先発を務めてきた経験は大きい。ダルトンとWRのA.J.グリーンが組む新人コンビが爆発すればベンガルズに勝機がある。

 5年ぶりのプレイオフ出場となるブロンコスは異色の存在だ。機動力に優れたQBティム・ティーボウの特長を生かすべく思い切ってカレッジスタイルのオフェンスを導入したことが功を奏し、地区優勝を果たした。ただし、終盤3試合は相手チームに対策を立てられてティーボウの走力がそがれている。ディフェンスの強力なスティーラーズ相手にどこまで改善できるかが1回戦突破のカギを握る。

 スティーラーズはエースRBラシャード・メンデンホールがひざのじん帯断裂で出場が不可能なほか、QBベン・ロスリスバーガー(左足首)、LBラマー・ウッドリー(ハムストリング)が故障で万全ではないため、バイウィークなしでのプレイオフの戦いは大きな負担となるだろう。

「ストップ・ザ・パッカーズ」に注目集まるNFC

 NFCはどこが「ストップ・ザ・パッカーズ」を実現するか。今季のMVP最有力候補であるQBアーロン・ロジャース率いるパッカーズのパスオフェンスは強力で死角がない。WRジョーディ・ネルソン、WRグレッグ・ジェニングス、TEジャーマイケル・フィンリーを擁するレシーバー陣は素早くディープゾーンに達するスピードを持ち、相手ディフェンスを広げて攻撃することができる。

 パッカーズに付け入る隙があるとすればディフェンスだ。トータルオフェンスはリーグ最下位で、シーズン終盤も失点の多さから接戦を強いられた。かろうじてレッドゾーンを死守することができているが、得点力の高いオフェンス相手にはここがアキレス腱となる可能性がある。

 49ersは失点がリーグで2番目に少ないディフェンスが武器。ディフェンスが相手オフェンスを止めて攻撃権を奪い返し、RBフランク・ゴアのランでボールをコントロールしながら競り勝つというのがお得意のパターンだ。それだけに前半で大量リードを奪われてしまうとパス中心のオフェンスを展開せざるを得ず、本来の力を出し切れない状況となるかもしれない。

 セインツは打倒パッカーズの有力候補だ。開幕戦では苦杯を舐めたが、最終8試合に勝った勢いがある。QBドリュー・ブリーズを中心とするパスオフェンスはリーグ優勝した2009年以上の破壊力を持ち、加えてRBダレン・スプロールズが支えるラン攻撃も安定している。パッカーズを倒すには敵地グリーンベイの過酷な天候をも克服しなければならないが、それを除けば十分に対抗し得る実力を持つ。

 セインツの最初の相手はライオンズ。QBマシュー・スタッフォードとWRカルビン・ジョンソンのコンビはリーグ屈指のホットラインで、プレイオフでもダイナミックなパスプレイが多くみられるだろう。だがライオンズの最大の武器はディフェンス。DTダムコング・スーやDEカイル・バンデンボッシュのいる守備ラインはオールスター級の顔ぶれで、シーズン前半のようにミスのないオフェンスとパワフルなディフェンスがかみ合えば、プレイオフで台風の目となるかもしれない。
 滑り込みで第4シードを獲得したジャイアンツは、シーズン終盤にディフェンスが急速に改善された。QBイーライ・マニングもキャリアベストの成績を残しており、インターセプトなどのミスを軽減すれば勝ち進んでも不思議ではない経験と実力を持つ。

 そのジャイアンツと初戦で対戦するのが、昨季は第1シードを獲得しながらパッカーズに敗れて敗退したファルコンズだ。オフェンスはQBマット・ライアンのパスとRBマイケル・ターナーのランを均等に使い、プレイオフチームでは最もオフェンスのバランスがいい。レシーブ100回をクリアしたWRロディ・ホワイトと新人フリオ・ジョーンズ、ベテランTEトニー・ゴンザレスの揃うレシーバー陣も安定感があり、ラン中心のオフェンスからいつでもパス重視のスキームに転換できるのが強みだ。

 27年間破られることのなかった殿堂入りQBダン・マリーノ(元ドルフィンズ)の単一シーズンでのパス獲得ヤードのNFL記録がブリーズとトム・ブレイディによって更新されたことに象徴されるように、今季ほどパスオフェンスが猛威を振るったシーズンは珍しい。ペイトリオッツ、パッカーズ、セインツといったチームのプレイオフ出場にもその傾向は反映されているが、その一方でレイブンズやベンガルズ、49ersらは強力なディフェンスを駆使して勝ち上がってきた。パスオフェンスの強いチームは総じてディフェンスが脆いというのも今季の特徴で、それがトーナメント式の短期決戦でどう影響するかも注目される。
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