サントス、柏戦で見えた多くの不安材料=ネイマールとガンソは輝きを放ったが
守備陣が見せた“みっともない”プレー
本職ではない左SBで起用されたドゥルバル(左)は、柏の酒井(右)に翻ろうされた 【写真:杉本哲大/アフロスポーツ】
準決勝の前日、柏のネルシーニョ監督はサントスの攻撃力を非常に高く評価していたが、守備については多くを語らなかった。ネルシーニョ監督の頭には、どうやってサントスの守備を崩すか戦略ができあがっていたのだろう。実際、ガンソのエレガントなパスやネイマールの華麗なるドリブルが披露される一方で、守備陣が見せたのは、かなり“みっともない”プレーだった。
しかし、これは当初から予想できたことだった。というのも、守備陣に故障者が続出したからだ。
柏戦で左サイドバック(SB)に起用されたドゥルバルは、本来エドゥ・ドラセナとセンターバック(CB)でコンビを組む選手。左SBはチームきってのベテラン、レオ(36歳)がレギュラーだが、右ひざの故障で本調子に戻らないまま日本に来た。来日後の練習に参加しない日もあった。
また、昨年のW杯・南アフリカ大会でブラジル代表のスタメンを張ったエラーノも、10月に右大腿(だいたい)部の故障で45日間、戦線から離脱していた。回復を見込んで登録メンバーに入ったが、出発前に調整できたのはわずか2試合のみである。そして、ラマーリョ監督が中盤の底で、相手攻撃の抑止力として頼みにしていたボランチのアドリアーノが、11月24日に行われたブラジル全国選手権のアトレチコ・ミネイロ戦で右足かかとを負傷。そのまま手術という最悪の結果になってしまったのだ。
ラマーリョ監督は、確かにブラジル屈指の戦術家として有名だが、頼みにしていた選手が不在では、イメージ通りのサッカーの実現は難しい。この試合、左SBに起用されたドゥルバルは、柏の右SB酒井宏樹に翻ろうされていた。SBが本業でないだけに、ドゥルバルにはスピードがない。当然、スピードのある相手についていけない。酒井もいい選手だが、彼にやられていたのでは、バルセロナの右SBダニエウ・アウベス相手に手も足も出ないということになってしまう。さらにはSB相手だけでなく、サイドを有効に使う攻撃陣の誰に対しても、なすすべがなくなってしまうということだ。
ネイマールとガンソの才能に疑いの余地はない
ボランチのエンリケは、ラマーリョ監督が期待を寄せていたアドリアーノと比較すると、パワーが全く足りない。もっとフェイジョン(ブラジルの豆料理)を食べて精をつけなければ、とても中盤でバルセロナの攻撃を食い止められないのではないかという不安を抱かせる。
本来はアドリアーノが徹底して中盤のマーキングを請け負い、右MFのエラーノと左MFのアロウカは、切り替えの起点として重要な役目を果たすはずだった。監督の戦術では、2人はもっと左右に開き、柏サイドに積極的に上がって、素早い攻撃を仕掛けるか、守備では相手にサイドを使わせないよう食い止めるという役割を担うはずだったが、ラマーリョ監督が描いていたイメージを実行するには至らなかった。
こうして試合を振り返ってみると、ラマーリョ監督の描いた守備戦術は、それほど機能していなかったことになる。
しかし、結果は3−1でサントスが勝利を収めた。その要因はやはり攻撃陣の働きのおかげだろう。ネイマールとガンソというブラジルで最も期待されている攻撃コンビの才能は、やはり疑う余地はなかった。
日本のファンに初お目見えしたネイマールは期待を裏切らなかった。特に前半20分ぐらいまでのネイマールのプレーは輝きを放っており、柏の選手に実力を見せつけていた。19分の先制ゴールのシーンで、柏の大谷秀和をフェイントで軽くいなし、左角を狙った左足の絶妙なシュートを見れば、バルセロナとレアル・マドリーが争奪戦を繰り広げる理由が分かっただろう。
ガンソは後半、柏が積極的に得点を狙って攻撃を仕掛けてきた時、1つのプレーで状況を一変させた。サントスが中盤でボールを奪われても、ガンソの足を経由すればチャンスに変わった。ガンソのゆったりとしたリズムが味方にスペースを作り、パスの通りを良くしたのだ。また、ガンソがボールをキープしている間、柏の選手が幾度となくボール奪取を試みたが、なかなか奪うことができず、結局はファウルで止めるシーンが目立った。ガンソは計6度のファウルを受けたが、これはネイマールよりわずか1回少ないだけだった(ちなみにネイマールはどの試合でもファウルを受ける回数がダントツに多い)。つまり、ガンソを止めるにはファウルという手段しかなかったのだ。