注目度増す二人の新鋭、新鍋理沙&岩坂名奈=バレーW杯 欠かせぬ戦力として勝負のとき

田中夕子

高さを生かしたブロックが魅力の岩坂

中国戦では高さを生かしたブロックで存在感を放った岩坂 【坂本清】

 一方、センター線から攻撃を仕掛け、ブロックの要でもあるポジションに入る岩坂の武器は、何と言ってもチーム内一を誇る1メートル87センチの高さ。クイックやバックアタックなど相手が中央から攻撃を仕掛けてくる場合や、サイドからクロスに放たれるスパイクに対するブロックはめっぽう強い。

 スタメンデビューとなった5日のアルゼンチン戦で存在感を示し、中国、ドミニカ共和国といった高さとパワーを備えた相手に対してもブロックポイントを量産した。

「『空中で流れずにしっかり止まって手を前に出す』ことを意識するようになって、ブロックポイントが取れるようになった。中国のエースを止めることができたのが、今は自信になっています」
 
 高い打点から放たれる無回転のジャンプフローターサーブも大きな武器。レシーバーの手元で落ちたり、伸びたり、絶妙の変化が加わる。サーブレシーブに定評のある新鍋ですら「あのサーブは取りにくい」と言うほどであり、ここまで9本のサーブポイントを取っている。4試合で40得点はチーム内でも木村(75点)、江畑幸子(日立)(64点)に次ぐ堂々の結果だ。
 素直な性格で、努力家。課題を克服し、経験不足を補おうと必死で練習する姿が、周囲にも好影響を与えている。エースの木村はこう言う。

「日に日に成長しているのが形になって見えるので、チームとしても楽しいし結果にもつながっている。若い選手が一生懸命頑張ってくれているので、勝負所の苦しい時には自分が決めて助けたい」
 
 だが、高さという絶対的な武器がある反面、岩坂には弱点もある。

 ブロック時、横への移動が遅いことだ。ドミニカ共和国、アルジェリアなど単調なバレーをする相手には正面で対峙(たいじ)するブロック機会も増えるため、岩坂の強さが発揮された。しかし、ブラジル、アメリカなど前後左右、コートの至るところから攻撃を仕掛けるチームと対する際には、移動の遅さは致命的になりかねない。
「最初の一歩目をもっと速く出せるように。強い相手と戦う時には、このままじゃダメだと思うので…」。岩坂自身も課題は自認している。

欠かせぬ戦力として

試合後に声援に応える新鍋(左)と岩坂 【坂本清】

 前半戦を終えてわずか1日の移動日を挟んだ11日からは、セルビア、韓国、ブラジルとの第3ラウンドに突入する。1、2敗で多くのチームが並び、これまで以上にし烈な戦いとなることが予想される中で、「まだまだ課題ばかり」と口をそろえる2人の真価を問うのは多少酷でもある。

 だが、忘れてはならない。

「若い選手が育つ場でも、育てようという場でもない。今は勝負の時なので、みんなが必死に戦う中でいい選手を使うだけです」

 竹下がそう言うように、確かに今は勝負のときだ。若い2人は、刺激を与えるためだけに、この場にいるわけではない。欠かせぬ戦力として――。伸び盛りの2人が成長を遂げたその分だけ、日本はきっと強くなる。

<了>

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著者プロフィール

神奈川県生まれ。神奈川新聞運動部でのアルバイトを経て、『月刊トレーニングジャーナル』編集部勤務。2004年にフリーとなり、バレーボール、水泳、フェンシング、レスリングなど五輪競技を取材。著書に『高校バレーは頭脳が9割』(日本文化出版)。共著に『海と、がれきと、ボールと、絆』(講談社)、『青春サプリ』(ポプラ社)。『SAORI』(日本文化出版)、『夢を泳ぐ』(徳間書店)、『絆があれば何度でもやり直せる』(カンゼン)など女子アスリートの著書や、前橋育英高校硬式野球部の荒井直樹監督が記した『当たり前の積み重ねが本物になる』『凡事徹底 前橋育英高校野球部で教え続けていること』(カンゼン)などで構成を担当

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