「目の前にあった金メダル」逃した日本男子、打倒中国への収穫と課題=世界体操 

矢内由美子

気持ち切り替え個人では好成績

個人総合で3位に入るなど活躍をみせた山室 【坂本清】

 チーム全体で素晴らしかったのは、団体での失意から立ち直り、個人種目で好成績を残したことだ。

 まずは中1日あけて臨んだ個人総合で内村が前人未到の3連覇を達成したが、これが圧巻の内容だった。2年連続2位のフィリップ・ボイ(ドイツ)との差は、約2点差だった10年のロッテルダム大会よりさらに開いて3.101。五輪前年となれば通常なら2番手以下のライバルがグッと力をつけ、差が縮まってくるものだが、内村はさらに差をつけてしまったのだ。
 
 内村とは高校時代からよき友、よきライバルだった山室が3位に入ったのも大きい。「表彰式のときに日の丸が2つ掲げられているのを見るのは気分が良かった。(内村と自分の)どちら(が上)でもいいけど、次はワンツーがいい」。山室は顔をほころばせた。

内村の負担減が今後の課題

男子団体に出場した選手たち。五輪での金メダルを目指して、課題とともに収穫も得た 【坂本清】

 そして今回、チーム全体を通じて最大の収穫だったと言えるのは、種目別でも山室と沖口がメダルを獲得したことだろう。
 08年北京五輪以降は内村の力が突出しており、2番手グループの成長に足踏みが見えていた。それは今年4月の全日本選手権個人総合の結果に顕著に表れており、1位の内村と2位の小林の2日間の点差が8点にまで開いていた。このため世界選手権でも内村にかかる負担が大きく、団体決勝では6種目全部に出場している。

 内村自身は「6種目出るのが当然だと思っている」と意に介さないが、沖口が「(内村)航平が出るのが4種目くらい抑えられるようになれば、日本は最強チームになる」と言うように、2位以下の底上げは団体総合の金メダル奪取に必要不可欠なのである。
 塚原光男団長は「今回は山室、沖口といった中堅の活躍が良かった。団体の金メダルは取れなかったが、十分に可能性があることを感じた」と締めくくった。内村も「2人とも安定感がある。来年も活躍してほしい」と頼もしく感じている。

 チーム一丸となって、ロンドン五輪団体金メダルへ。ミス克服という課題とともに、上昇ムードをつかんだ世界体操だった。

<了>

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著者プロフィール

北海道生まれ。北海道大卒業後にスポーツニッポン新聞社に入社し、五輪、サッカーなどを担当。06年に退社し、以後フリーランスとして活動。Jリーグ浦和レッズオフィシャルメディア『REDS TOMORROW』編集長を務める。近著に『ザック・ジャパンの流儀』(学研新書)

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