ジョコビッチ、崖っぷちから生還 ナダルとの決勝へ=全米テニス第13日

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ジョコビッチにとって「2011年最高の勝利」

フェデラーをフルセットの末に破り、決勝に進出したジョコビッチ 【Getty Images】

 テニスの全米オープンは10日(現地時間)、米国・ニューヨークで行われ、男女準決勝の結果、それぞれの決勝進出者が決まった。

 2万3700人を飲み込むアーサー・アッシュ・スタジアムのボルテージは激しく上昇と下降を繰り返した。“スーパーサタデー”はまさにスーパーな一日だったが、なんといっても第1試合だろう。今日もゲスト席のどこかにハリウッドスターなどセレブたちを迎えたセンターコートは、“本物感”漂うロジャー・フェデラー(スイス)を圧倒的に後押しした。全米オープン初制覇を狙う新王者ノバック・ジョコビッチ(セルビア)との大一番に注目が集まった。

 それにしても、2セットアップから2セットを落としてすでに力尽きたかに見えたフェデラーが、最終セットで生還し、マッチポイントをつかんだときに最高潮に達したボルテージが、その後どん底に落とされるとは……。2つあったマッチポイント、しかも自身のサービスゲームだった。
 1つ目はジョコビッチがクロスへ目の覚めるようなリターンエース。「一か八か、目をつむって打ったのさ」と言うのもあながちジョークでもないだろう、それくらいの“賭け”にジョコビッチは勝ったのだ。あれが入ってしまえば対処のしようがなかった。

 フェデラーにとって悔やまれるのは2本目だ。フェデラーのフォアの逆クロスはネットをかすり、サイドラインの向こうへぽとりと落ちた。「あそこから全てが変わった」。敗者として記者会見の席に座っているのが奇妙ですらあったようだ。しかし、フェデラー全盛のころ、他のトッププレーヤーは同じことを言ったものだ。「ロジャー相手につかんだチャンスで一度ミスすれば、それで何もかもがおしまいだ」と。

 ジョコビッチのあのリターンがオンラインで入り、フェデラーのあのフォアがネットに弾かれる――今の二人の勢いを象徴したものだったというしかないのかもしれない。この勝利で今季63勝目を挙げたジョコビッチが、「2011年最高の勝利」と位置づけた一戦だった。

“デンマークの壁”、またしても崩れる

 この結果を見てからセンターコートに入ったラファエル・ナダル(スペイン)とアンディ・マレー(英国)。今季ジョコビッチに対してはナダルが5戦全敗、マレーは1勝2敗だが最近の対戦で途中棄権とはいえ勝っている。両者は果たしてどんな思いを胸に抱いただろうか。いずれにせよ、ナダルに動揺はなかった。最初の2セット、ブレークポイントは握られてもしのぎ、6−4、6−2で連取。マレーはやはり勝ち味が遅かった。第3セットでようやく持ち味のサービス力、ネットプレーを発揮し始めたものの1セット返すのが精一杯。ナダルが2年連続の決勝進出、連覇へ王手をかけた。

 女子では、昨年の全仏オープン準優勝のサマンサ・ストーサー(オーストラリア)が、今大会のシンデレラガール、世界ランク92位のアンジェリーク・カーバー(ドイツ)の快進撃を止めた。男女のシングルス4試合で唯一センターコートから外されたカードだったが、特にカーバーの大健闘で観客を大いに楽しませた。

 そして最後、午後10時過ぎの開始となったのは、ここまで残った唯一の米国選手、セリーナ・ウィリアムズと女王キャロライン・ウォズニアッキ(デンマーク)との準決勝、しかし事実上の決勝戦だった。

 ウォズニアッキには世界1位を証明する絶好の機会だったが、成功したとはいえないだろう。ウィナー(相手がボールに触れずに決まったショット)の数がセリーナの34本に対してウォズニアッキはわずか5本。その代わりアンフォーストエラー(ミス)はセリーナがウォズニアッキの約3倍だった。新旧女王のテニスの質の違いを十分に表す数字である。立ち上がりややスローだったセリーナは、勝利の行方がほぼ決まってからも2−5から4−5に追い上げられるなどもたついたものの、大勢に変化なし。中盤で繰り広げられたラリー戦は見応えがあったが、攻めているのはいつもセリーナで、そのサービス、ショットには手がつけられなかった。“デンマークの壁”はまたしても崩れた。

<了>

文・山口奈緒美(やまぐち・なおみ)
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