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「タケフサは、左利きのイニエスタ」
バルサのカンテラに加入した久保君の“インテリジェンス”

特例が認められ、バルセロナの一員に

久保君のバルセロナ入団の物語は、日本で行われた「FCバルセロナキャンプ」から始まった(写真は11年のキャンプのもの)
久保君のバルセロナ入団の物語は、日本で行われた「FCバルセロナキャンプ」から始まった(写真は11年のキャンプのもの)【イースリー】

 日本人の少年が、FCバルセロナのカンテラ(下部組織)に加入――。まるで漫画のような話だが、現実の出来事だ。おとぎばなしの主人公の名前は、久保建英(くぼ・たけふさ)。日本人で初となる、FCバルセロナの下部組織に加入を果たした10歳の少年である。


 事の始まりは、2009年に日本で行われた「FCバルセロナキャンプ」だった。これは日本のAmazing Sports Lab Japan社が企画したもので、現地バルセロナスクールコーチの指導を、日本で受けられるというものだ。久保君は8歳の時にこのキャンプに参加した。そこですぐに、「すごい子どもがいるぞ」とコーチの間で話題になり、キャンプで最も優秀な選手に送られるMVPを獲得。その特典として、バルセロナのスクール選抜の一員に選ばれ、ベルギーで開催された国際大会に参加する。そこで、7試合で6ゴールを挙げる活躍を見せ、チームは3位ながら大会MVPに選ばれた。


 その後、バルセロナのコーチの強い推薦で、下部組織の入団テストを受けることに。バルセロナには「13歳以下の選手は、カタルーニャ州出身でなければ契約しない」という決まりがあるが、特例として認められ、晴れてバルセロナの一員となった。


 バルサキャンプを企画し、久保君の入団テストに同行したAmazing Sports Lab Japan代表の浜田満氏によると、「バルセロナの下部組織の基準として、最高レベルの選手を10とすると、カタルーニャ出身の選手はレベル7、外国人であればレベル9以上が必要になる」という。つまり久保君は、この年代では最高レベルの選手に近い評価を得たことになる。

非凡な“サッカーインテリジェンス”

 バルセロナの下部組織で長きにわたって指導をし、シャビを育てた名伯楽として知られるジョアン・ビラ氏は、久保君のプレーを見て「将来、スペインの1部リーグでプレーできるタレントを持った選手だ」と太鼓判を押す。


 それでは、久保君のどこが優れているのか。日本で“天才少年”というと、イメージしやすいのが、ボールを持ったら、圧倒的な個人技で相手をかわしてゴールを決める選手だ。しかし、久保君はそのようなタイプではない。もちろん、ドリブルやボールコントロール、左足の正確なシュートも極めて高いレベルに達しているが、彼の非凡さは常に周りの状況を確認し、プレーの中でベストの選択ができる“インテリジェンス”の部分にある。


 彼がピッチに立つと、チャンスの質が変わる。“人とスペース”の概念を理解し、状況に合ったプレーを選択できるため、決定的なチャンスが多く生まれるのだ。見た目は10歳のちびっ子だが、頭の中は大人顔負けか、それ以上のサッカーインテリジェンスを持っている。そして、それこそが、バルセロナが評価した部分でもある。


 バルサキャンプで来日したコーチの責任者、マルク・サバテ氏は言う。「われわれが考えるいい選手とは、テクニックに加えて、“違い”を生み出せる選手です。違いとは、判断のスピードやポジショニングの部分であり、ピッチの中でリーダーシップをとれて、チームを円滑にできる選手を求めています」。その代表的な例がシャビであり、イニエスタであると言える。


 では、なぜ久保君は10歳にして、バルセロナのコーチが絶賛する“サッカーインテリジェンス”を身につけることができたのだろうか。その要因はいくつかある。1つは、小さなころからバルセロナの試合映像を繰り返し見ていたことだ。熱心な父親とともに、シャビ、イニエスタ、メッシのプレーを重点的に見て、自分のプレーと比較していたという。


 浜田氏は言う。

「スペインでバルセロナの練習に参加した際、建英はすでに何年も前からそこでプレーしていたかのように、普通にプレーすることができていました。それって、驚くべきことなのです。周りにいるのは、毎日バルサメソッドの指導を受けている選手ばかりなのですから。アンリもマスチェラーノも、加入当初はバルサに適応するのに時間がかかり、試合であまり活躍することができませんでした。それを10歳の少年がすぐにできるとは正直、驚きましたね」


 久保君はバルサの映像を繰り返し見ることのほかに、バルサキャンプやシャビを育てたジョアン・ビラ氏のクリニックに参加し、積極的に「バルサのサッカー」を吸収していった。だからこそ、違和感なく溶けこむことができたのだ。

鈴木智之
スポーツライター。『サッカークリニック』『コーチユナイテッド』『サカイク』などに選手育成・指導法の記事を寄稿。著書に『サッカー少年がみる みる育つ』『C・ロナウドはなぜ5歩さがるのか』『青春サッカー小説 蹴夢』がある。TwitterID:suzukikaku

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