ビーチバレー界に危機? 真価が問われる秋

ビーチバレースタイル

浅尾らの活躍で一時は注目を集めたビーチバレーだが、現状は? 【写真/ビーチバレースタイル】

 ビーチバレーは、今では知らない人がいないほどの競技となった。ひとりの選手が人気を引っ張り、観客が増え、テレビやスポーツ紙をにぎわしてきた。しかし、今年になり様子が変わり始めた。観客は減少傾向にあり、世間の「熱」も下がっている。この由々しき事態に、日本ビーチバレー連盟は対策を打ち始めた。
 果たして、ビーチバレーの人気は根付くのか。マイナー競技に戻ってしまうのか。ビーチバレー界はいま、危機に直面している。

連盟方針の転換とその理由

 日本一を決める「ビーチバレージャパン」。1987年、国内で初めて催された伝統ある大会である。今年も8月11日から13日まで、四半世紀前と同じく神奈川県藤沢市の鵠沼海岸にて行われたが、その様相は昨年までとは一変した。

 ここ数年、メインコートをぐるりと取り囲んでいた大きなスタンドは姿を消し、階段状になったコンクリートの防潮堤が自然の客席となっている。めいめいに座った観客は「無料で」プレーを眺めている。熱心なファンは携帯電話を選手に向け、試合中でも練習、ウォームアップ中でもパシャリパシャリと写真を撮っていた。

 今大会、有料席はコートサイドのみ。他は無料観戦だった。またこれまで断固禁止してきた写真撮影が、「多くのファンの要望に応えるため」、携帯電話に限り認めることになった。
 ファンにとっては喜ばしい変わり様だが、今回の方針転換は、日本ビーチバレー連盟(以下・連盟)にとって苦肉の策ともとらえられる。

 5年前、突然スポットライトを浴びた若手の一選手、浅尾美和(エスワン)のメディアへの露出が増え、ビーチバレー界も熱気を帯びた。しかし人気が高まるにつれ予想を超えた熱をコントロールできなくなる。案じた連盟側は観客による写真撮影禁止、報道陣への取材制限など、自ら熱を冷ますがごとく策を講じた。
 結果、国内JBVツアーの観客数は2007年東京大会(3900人)を未だ超えることができず、今年に入り第1戦東京大会では1600人と低迷。また、今季前半3戦の大会平均でも1500人を割り、07年の平均(2130人)と比べ約30パーセントのダウンとなった。
 報道陣の数はさらに顕著だ。過去には最高146のメディアが取材を行ったが、今年の東京大会は65。浅尾が成績を残せていないこともあるが、半数以上の報道関係がニュースとしての価値を見いだせなくなっている。

もうひとつの危機

写真も携帯での撮影に限り認められることになった 【写真/ビーチバレースタイル】

 ビーチバレーは興行だけでなく、本質の競技面でも危機に直面している。

 1年後のロンドン五輪。日本チームは出場が危うい状況にある。男女代表各2チームともワールドランキングで出場権を獲得することは現実的ではなくなっており、五輪アジア大陸予選を勝ち抜くしかない。しかし昨今アジア諸国の成長は目覚ましく、以前のように日本が優位に立っているわけではない。その状況で中国、カザフスタン、オーストラリアなど強豪国を相手に、「アジア枠1」を取るのは容易ではないだろう。

 あるメディア関係者は話す。「ビジュアルも人気を得る要素だが、世界に通じる『強さ』があって、世間の人も認知し応援してくれる。女子サッカーがこれほど話題になったのは世界一という結果があるから」

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著者プロフィール

2009年4月創刊。国内トップ選手の情報、大会レポート、技術指導、トレーニング論など、ビーチバレーを「見る」「やる」両方の視点から、役立つ情報が満載。雑誌のほかに、ビーチバレースタイルオンラインとして、WEBサイトでも大会速報、大会レポートなど、ビーチバレーに関する報道を行っている。

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