世代トップに君臨し続けた日大三=2011夏の高校野球・総括

松倉雄太

聖光学院・歳内、金沢・釜田ら好投手が多かった大会

聖光学院・歳内ら本格派の好投手に注目が集まった 【写真は共同】

 今大会の総得点は426と昨年の473を下回った。例年のような打者有利は少しではあるが薄れた印象だ。1点差ゲームは16試合と3分の1近く、延長戦は1大会最多タイとなる8試合あった。八幡商対帝京など試合終盤の劇的な逆転劇も多かった。あらためて9回を最後まで守る難しさ、最後まであきらめない気持ちの重要性を認識させられた。

 聖光学院の歳内宏明、金沢の釜田佳直、英明の松本竜也(いずれも3年)といった本格派の好投手が多く、また能代商の保坂祐樹や如水館の浜田大貴(いずれも3年)など軟投派でも印象に残る投手も多数いた。反面で、際立つ打者が少なかったのが今大会の特徴として挙げられる。

 智弁学園の青山大紀、光星学院の田村龍弘、龍谷大平安の高橋大樹など来年期待の2年生が目立った大会でもあった。

午前8時開始…体調管理に苦労も

 今大会は節電対策で準決勝までが午前8時開始だった。4試合日のナイトゲームは減り、明るい時間に全試合が終了することも多かった。
 早く試合が終わることで、選手は夜にゆっくりと休めるというメリットもあり、入場者数も前年を上回った。今大会の特別措置だが、成功だったと言えるのではないだろうか。

 ただし8時開始の球児は午前3時台に起床する。普段の学校生活ではありえないことだ。
 8時開始が続いて体が慣れたチームと、午後試合の次が第1試合と体調管理に苦労したチームが対戦したこともあった。
 また準々決勝からは再抽選で前日に急に早起きが決まることもある。来年どうなるかはこれから協議をするようだが、選手の体調を考えると抽選日や時間の組み方などを一考しても良いように取材をしていて感じられた。

 3月11日、日本中を襲った悪夢から5カ月が過ぎた。
『がんばろう日本』をスローガンにし、表向きは復興へ向かって歩み始めているように見える。しかし準決勝のあった8月19日にはまた大きな余震があった。まだまだ先行きの見えない不安を抱えている方が多いと聞く。高校球児とて同じで、3年生はこれから進路という人生の分岐点に差し掛かる。そして下級生は、また巡りくる来年を目指している。
 来年も『がんばろう日本』の精神を忘れることなく、ひたむきに白球に向かう球児の志が、復興へ少しでも弾みをつけられればと切に願う。
『あっぱれ日本』と言えるその日まで……。

<了>

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著者プロフィール

 1980年12月5日生まれ。小学校時代はリトルリーグでプレーしていたが、中学時代からは野球観戦に没頭。極端な言い方をすれば、野球を観戦するためならば、どこへでも行ってしまう。2004年からスポーツライターとなり、野球雑誌『ホームラン』などに寄稿している。また、2005年からはABCテレビ『速報甲子園への道』のリサーチャーとしても活動中。

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