新たな変化に賭けたアルゼンチン
攻撃的な美しいサッカーを志向する新監督
アルゼンチン代表の新監督に就任したサベーラ氏。困難な時代を迎えている同代表を救うことはできるのか 【写真:Action Images/アフロ】
あらゆるアンケートで90%以上の支持を得ながら、AFA(アルゼンチンサッカー協会)会長のフリオ・グロンドーナとの不仲が原因で声が掛からないカルロス・ビアンチを除き、過去の経歴で言えばサベーラは代表を率いるに値するキャリアの持ち主だ。エストゥディアンテスで好成績を収めただけでなく、すでに1994年から98年のワールドカップ(W杯)・フランス大会にかけ、ダニエル・パサレラ監督のアシスタントコーチとしてアルゼンチン代表にかかわった経験を持っているからだ。
サベーラは現実的な指導者だが、実現可能な範囲では攻撃的な美しいサッカーを志向する男でもある。選手時代はクリエーティブなMFとして名をはせ、リーベル・プレートの下部組織で頭角を現した後にイングランドへと移籍した(シェフィールド・ユナイテッドとリーズでプレー)。82年に帰国した後はカルロス・ビラルド率いるエストゥディアンテスでキャリア最高の時期を過ごし、アルゼンチン王者にもなった。
エストゥディアンテスでは監督としてもタイトルを手にした。2009年にコパ・リベルタドーレスを制し、同年のクラブW杯ではあと1分で世界一というところまでバルセロナを追い詰めたものの、土壇場で現れたペドロの同点ゴールにより延長戦の末に涙をのんだ。続く10年の前期リーグでは優勝している。
ビアンチが代表監督に就任しない理由
ビアンチに関してグロンドーナは、彼が過去に2度、代表監督就任の機会を拒んだこと、そして自身が会長を務める限り彼がAFAで働くことはないだろうと繰り返し主張している(98年にはボカ・ジュニアーズが先んじてビアンチと契約を交わし、その後約10年にわたって黄金期を築いた。04年には06年W杯までの2年弱の契約期間では短すぎるとして、ビアンチがオファーを断った)。
先日グロンドーナは、なぜ選手たち、特にリオネル・メッシに受け入れられていたバティスタにもっと時間を与えなかったのかと問われた際、「わたしの気まぐれが悪い結果をもたらしたと言われるのはごめんだ」と答えた。おかしな話である。最高の選択肢であるはずのビアンチが代表監督に就任しない理由が、グロンドーナの気まぐれ以外にあるというのか?