「優勝できなければ引退」K-1新王者・久保優太の覚悟

茂田浩司

「全試合判定決着」をどう考える?

【t.SAKUMA】

――準決勝の野杁正明選手との試合はほぼ完封でしたね

 セコンドの矢口(哲雄)トレーナーから「1回戦のことは忘れてステップを使え。止まるから力む」と指示されて、動きは取り戻せたと思います。でも「効いたな」という感触が何回かあったんですけど、野杁選手のガードが固くてそこから崩せなかったです。高校生でテクニックがあって、これからが恐ろしいです。

――卜部功也選手との決勝戦は1RにローでKOしてしまう勢いでしたけど、3Rにパンチを貰ってしまうシーンもありました

 決勝戦も死にものぐるいで「蹴り続けるしかない」と思って、自分の足を痛めるぐらい蹴ったことも初めてですし、自分のペースではなかったです。パンチとかハイを打てば違う展開になったかもしれないですけど、いっぱいいっぱいになってしまって。
 3Rには「なんで倒れないんだ?」って僕も折れそうでしたけど(苦笑)その時にチームHOGUMI(長島☆自演乙☆雄一郎や京太郎が参加)の古家(政吉)トレーナーの「自分が辛い時は相手はもっと辛い」という言葉や、ラントレ(階段や坂道ダッシュのトレーニング)の時に「ここで諦めたら相手が来るぞ!」と言って下さったことを思い出したんです。辛かったですけど「ラントレに比べたら」と思えました。

――悲願の初優勝。試合後「僕は引退が掛かってましたから」と他の7選手との“覚悟の差”を勝因に挙げていましたね

 はい。でも自分の未熟な部分がたくさん見つかりました。「負けたら引退する」と自分にプレッシャーを掛けたら自分の動きが全然出来なくなってしまいましたし。当分は「引退」を掛けて試合をすることはないと思うんですけど、これから対世界や「魔裟斗さんのようにK−1を背負える選手になること」を目指して試合をするとまたプレッシャーが掛かってくると思うんです。矢口トレーナーからは「まだ場数が足りない」と指摘されてまして、これから大きな舞台を何回も経験して、慣れて強くなっていきたいです。

――そのためにもK−1 MAXをもっと盛り上げないといけないですけど、今回、本戦10試合で「KOゼロ」はどう思いますか?

 客観的に見ると実力が拮抗していたんだと思います。テクニック的にも、去年はKOが多かったんですけど(トーナメント7試合中5試合がKO)今年はお互いに研究しあってこうなったと思います。あと「KOしよう」「いい試合を見せよう」と意識しすぎると逆に判定決着になってしまうことも多いじゃないですか。

練習したカウンターは「対世界」で使います!

K−1MAX63キロ級のエースへ、次は“対世界”だ 【茂田浩司】

――久保選手自身の3連続判定勝利はいかがですか?

 僕は、勝ちに徹した戦い方をしてしまいました……。Krushライト級グランプリ(09年)も去年のK−1MAXも準優勝止まりだったのは、つい熱くなったり「いい試合をしよう!」と背伸びをしてしまうんです。お客さんが打ち合いやKOを望むのは分かっているんですけど、今回僕は優勝しなければいけない理由があったので、相手が前に出てきたら前蹴りやミドルで距離を取る練習をしてきて、試合中に僕が熱くなってしまったら矢口トレーナーから「(相手が)前に出てきたぞ!」と言って貰って距離を取るようにしました。これからは選手として「いい試合をして優勝出来るようにすること」が課題です。

――しかし、久保選手が練習で打つパンチや蹴りの凄まじい破壊力を見ると、これをそのまま出せたらKO出来るのに、と思ってしまうんですけど

 はい、その確信はあります!(キッパリ) 2年前はまだ非力でしたけど、去年3月から古家トレーナーにフィジカルを見て貰って、蹴りもパンチも1発が重くなったんです。ただ、そのパワーをどうテクニックと連動させるかが正直とても難しかったんですけど、段々分かってきて、ここ数カ月で(フィジカルの)数値が上がりましたし、矢口トレーナーも「パンチ力が上がってる」と言って下さってました。
 本当は、大和(哲也)選手対策で矢口トレーナーから3つのカウンターを教えていただいていたんです。今回は使う機会がなかったんですけど、でも世界に行った時に今回練習したカウンターが使えると思います。

――最後に、次の目標は「世界」ですか?

 はい。それと、魔裟斗さんがK−1 MAXを世の中に知らしめたように、僕もそうなりたいと思っています。23歳でK−1のチャンピオンになれて「順調」って言われることもあるんですけど、それは「隣の芝生は青く見える」というか(苦笑)。でもいろんな経験も自分の糧になりますし、本当にいろんな方が応援して下さってるので環境には恵まれているなって思います。課題を克服して、もっと喋りも上手くなって(笑)。

――「63kgの新エース」になりますか?

 はい! K−1を背負って、引っ張っていける選手になれるようにもっと練習を頑張っていきたいと思います。

<了>

【プロフィール】
久保優太●くぼ・ゆうた
1987年10月19日、東京都出身
8歳でテコンドー、15歳からキックを始め、17歳でプロデビュー。愛称は「久保きゅん」。
キャッチコピーは「微笑みスナイパー」

戦績33戦28勝(12KO)4敗1分
175cm、63kg(試合時)
DC.LAB GYM所属

(獲得タイトル)
・NJKFフェザー級王座。
・WPMO世界Sフェザー級王座。
・Krushライト級グランプリ2009準優勝
・K−1WORLDMAX−63kg日本トーナメント2010準優勝、2011優勝

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著者プロフィール

94年から週刊の情報誌でスポーツページを編集。野球、サッカー、NBA、テニス、F-1など様々な競技や選手を取材。96年からフリーに。99~02年「ゴング格闘技」編集ライター。現在は格闘技、お笑い、教育、健康、舞台・テレビ、政治・時事などを幅広く取材・執筆中。

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