“異色のクローザー”西武・牧田は成功するか!?=独自の投手哲学「打者をもてあそびたい」
渡辺監督の決断「やられたらしょうがないと、みんなが納得する」
度胸の良さが光る牧田。地上すれすれのところから浮き上がるような球を投げ込む 【写真は共同】
しかし、投球内容の割に、交流戦終了時まで2勝4敗と勝ち星を伸ばせなかった。打線の援護に恵まれなかったのは否めないが、試合終盤になるとボールのキレが落ち、痛打される場面も少なくなかった。
そんな折、昨季最多セーブを獲得したシコースキーが右ひじの手術で長期離脱、代役を任された岡本篤志の不振というチーム事情で、渡辺久信監督は牧田を抑えに抜てきした。指揮官の決断には、こんな理由があった。
「このピッチャーでやられたらしょうがないと、みんなが納得するのが抑え。うちのピッチングスタッフでそれをできるのは牧田だから」
技術面以外で、クローザーに求められるのが度胸の良さだ。この点で牧田は適している。5月6日の楽天戦で大ベテランの山崎武司に対し、走者なしからクイックを使ったことで激怒されたが、ルーキーは動じる素振りを見せなかった。
その裏には牧田の“強心臓”ぶりと、独自の投手哲学がある。シーズン開幕前の3月、牧田は理想の投手像についてこう話している。
「抑えようというより、バッターをもてあそんでやろうと考えています。緩急で分からなくさせるような、嫌なピッチャーを目標にしています」
好スタートも慢心なし
そんな高橋が興味深い話をしてくれた。
「こういう世界は自信家より、臆病者の方が成功すると思う。臆病者って、毎日怖いでしょ? 僕もそうだったけど、プロに入って1年でクビになると思った。どうせクビになるんだったら、毎日精一杯やろうと思ったよね」
臆病者は失敗が怖いから、日々の練習を重ねる。高橋はクビになる恐怖感を抱きながら練習を積み、1番打者として広島を3度の日本一に導いた。
牧田も自信家ではなく、臆病者タイプだ。初セーブを挙げた楽天戦後、自らを戒めるように話した。
「今日はランナーが出なかったけど、自分の失点パターンはランナーを出してからです。今日は抑えられたけど、次は分かりません。自分のピッチングで頑張っていきたいです」
6月29日のオリックス戦では、3点リードの最終回にマウンドへ。先頭打者のバルディリスに死球を与え、その後2死一、三塁のピンチを迎えたが、無失点で切り抜けふたつ目のセーブを記録した。
「これからいろんなことがあると思う。ルーキーだし、勉強しながらやっていけばいい」
渡辺監督が6月26日の楽天戦後に言ったように、クローザー人生には山もあり、谷もあるだろう。ただ、守護神としての資質があり、野球人として成功する心構えを持つ牧田なら、西武に新たな勝ちパターンを築いてくれるはずだ。
<了>