コパ・アメリカ優勝が義務付けられたアルゼンチン

アルゼンチンとウルグアイが共に最多14回の優勝回数

メッシ(右)、テベス(左)らを擁するアルゼンチンは優勝候補の筆頭として、18年ぶりのタイトル獲得なるか 【Getty Images】

 7月1日(日本時間2日)、18年ぶりのタイトル獲得を目指すアルゼンチン代表は、ラプラタで行われるボリビアとの開幕戦にてコパ・アメリカ(南米選手権)優勝へ向けた挑戦の第一歩を踏み出す。

 アルゼンチン代表のセルヒオ・バティスタ監督のもとには、同大会を前に同国のスター選手が勢ぞろいした。そのほとんどがヨーロッパの第一戦で活躍しているという事実は、アルゼンチンとウルグアイが共に最多14回の優勝回数を誇る歴史ある同大会の特徴の1つである。

 同大会で見られるサッカーは完全なる南米スタイルだと言い切ることができるだろうか? 恐らく答えはノーだ。何年も前から大半のスター選手はヨーロッパのサッカー界に身を置き、契約するビッグクラブの規律や練習メソッド、戦術への適応を進めてきた。そのため南米各国の代表監督は、ヨーロッパへ進出する前の若者か、ヨーロッパでの挑戦を終えて戻ってきたベテラン選手を国内組の中心に据えない限り、ヨーロッパスタイルでプレーする選手たちに合わせてチームを作らなければならない。

 未来のタレントを早い段階でヨーロッパへ移籍させるべく、代理人たちがこぞってユース年代の大会に足を運ぶようになった現在では、経済がサッカーのスタイルにまで影響を及ぼすようになった。南米の国同士の対戦とはいえ、どのチームも練習方法や戦術はヨーロッパ式だ。その意味では、今大会で見いだされる新たな発見はそれほど多くないだろう。

 だが、重要な選手たちがどのような状態で今大会を迎え、どれほどの期待を生みだしているのかという点は注目に値する。アルゼンチンでいえば、それは世界最高の選手であるリオネル・メッシ、またセルヒオ・アグエロ、ゴンサロ・イグアイン、ハビエル・マスチェラーノ、ハビエル・パストーレ、そしてバティスタ監督と和解したカルロス・テベスといった面々である。

アルゼンチンのグループ最大のライバルはコロンビア

 開催国であること、ボリビア、コロンビア、コスタリカと同組の楽なグループに入ったこともあり、アルゼンチンは優勝候補の筆頭に挙げられている。だがそれは、ライバルとなるパラグアイに加え、エクアドルとベネズエラが属するグループBに入ったブラジルも同様だ。

 初戦でベネズエラと対戦するブラジルは、カカの不在などいくつかの問題を抱えており、過去のチームと比べて特に中盤の名前が見劣りする。だが、コパ・リベルタドーレス王者にしてクラブワールドカップ(W杯)ではバルセロナのライバルとなるサントスの若きタレント、ネイマール(彼はレアル・マドリー移籍が秒読みと言われている)とガンソ、強靭(きょうじん)なDFのルシオ、サイドバックのマイコンやダニエウ・アウベスらを擁している。

 アルゼンチンにとってグループ最大のライバルはコロンビアだろう。特にヨーロッパリーグ得点王として最高の状態で今大会を迎えるラダメル・ファルカオ、そして今季ラシン・クラブにサプライズ移籍し、後期リーグ得点王となったテオフィロ・グティエレスは要注意だ。

 ブラジルはアルゼンチン人のヘラルド・マルティーノ監督率いる経験豊富なパラグアイと対戦しなければならない。昨年のW杯・南アフリカ大会でスペインを敗退寸前まで追い込むなど大躍進したパラグアイは、南米予選でも3位と優秀な成績を残している。

もう1つの優勝候補、ウルグアイ

 グループCには物静かな、だが常にうぬぼれの強いもう1つの優勝候補、ウルグアイがいる。これまでウルグアイは同大会で素晴らしい成績を残してきた。1987年アルゼンチン大会では、その1年前にW杯を制した開催国を準決勝で破っている。

 昨年のW杯でチームをベスト4に導いたオスカル・ワシントン・タバレス監督率いるウルグアイには、引き続きフォルラン、カバーニ、スアレスという危険極まりない3人のアタッカーがいる。彼らにとってのライバルは不確定要素の多いチリとなるだろう。

 同じくW杯で好成績を残したチリは、チームの象徴だったマルセロ・ビエルサ監督が去り、アルゼンチン人のクラウディオ・ボルギ監督が後を継いだ。アルヘンティノス・ジュニアーズの監督として2010年の国内リーグを制した彼は、昨季率いたボカ・ジュニアーズでは予期せぬ失敗を経験している。

 ボルギにとっての大きな挑戦は、中盤のガリー・メデル、チーム1のスター選手でバルセロナへの移籍決定が間近に迫っているとされるアレクシス・サンチェスらとともに、ビエルサが作り上げたサッカーをいかに継続できるかどうかとなる。

 経験豊富なウルグアイ人のセルヒオ・マルカリアン監督が率いるペルーは30年にわたり良い成績を残せておらず、今回も多くの負傷者を抱えるなど、深刻な危機が続いている。メキシコはグループAのコスタリカと同じく、ほとんどの主力選手が北中米カリブ海連盟(CONCACAF)主催のゴールドカップに出場しているため、今大会にはBチームで挑む。

 ウルグアイの初戦は7月4日、サンフアンで行われるペルー戦となる。同スタジアムでは続けてチリ対メキシコも行われる。

 過去2大会(04年ペルー大会、07年ベネズエラ大会)ではアルゼンチンが最高のチームと言われたものの、共に決勝で弱みを露呈してブラジルにタイトルを譲ることになった。果たして今回の決勝も同カードとなるのか、それともウルグアイが2強に割って入るのか。

 その答えは数日後に分かる。

<了>

(翻訳:工藤拓)
  • 前へ
  • 1
  • 次へ

1/1ページ

著者プロフィール

アルゼンチン出身。1982年より記者として活動を始め、89年にブエノス・アイレス大学社会科学学部を卒業。99年には、バルセロナ大学でスポーツ社会学の博士号を取得した。著作に“El Negocio Del Futbol(フットボールビジネス)”、“Maradona - Rebelde Con Causa(マラドーナ、理由ある反抗)”、“El Deporte de Informar(情報伝達としてのスポーツ)”がある。ワールドカップは86年のメキシコ大会を皮切りに、以後すべての大会を取材。現在は、フリーのジャーナリストとして『スポーツナビ』のほか、独誌『キッカー』、アルゼンチン紙『ジョルナーダ』、デンマークのサッカー専門誌『ティップスブラーデット』、スウェーデン紙『アフトンブラーデット』、マドリーDPA(ドイツ通信社)、日本の『ワールドサッカーダイジェスト』などに寄稿

編集部ピックアップ

コラムランキング

おすすめ記事(Doスポーツ)

記事一覧

新着公式情報

公式情報一覧

日本オリンピック委員会公式サイト

JOC公式アカウント