75歳の名将・古葉監督がつかんだ“初勝利”=全日本大学野球選手権リポート

松倉雄太

延長戦を制した東京国際大 光った積極的な走塁

試合中はベンチの端の“定位置”から選手を見守った 【島尻譲】

「グラウンドにいる方が気は楽です」
 東京国際大の古葉竹識監督は、あまりに多い報道陣に驚きながら記者会見場に姿を見せた。

 勝利を目前にした9回に追いつかれ、今大会で導入された延長タイブレーク方式(1死満塁から攻撃スタート)に突入。相手投手の暴投が決勝点になって、何とか全日本選手権初勝利を挙げた。

「もっとチャンスはあったのだが、相手投手にうまく投げられた」と厳しい試合になったことを振り返った古葉監督。
 その厳しい試合をものにできたのは、1点をどん欲に取りにいく走塁だ。
 2死二塁からレフト前ヒットで走者の榊原直人(4年)が本塁に突っ込んだ初回の攻撃からその姿勢が垣間見えた。
 3回、同点に追いつくきっかけは、レフト前ヒットが大きくバウンドするのを見て二塁を陥れた小峰和博(3年)の判断。そして勝ち越した4回も、一塁への強烈なライナーがベース前で跳ねてライトへの二塁打とした茂木亮太(4年)の積極性だった。

「全身全霊で戦っていた。ウチのミスで一つ余分に進塁させてしまった」と古葉監督のすきのない野球をたたえたのは龍谷大・椹木寛監督。
 さらに、東京国際大は「タイブレークになった時の練習もやってきた」と準備の部分でも相手を上回った。

10回を投げ切ったエースに「今年のドラフト1位です」

2回戦では東京情報大と対戦する 【島尻譲】

 試合前は「昭和50年の(広島カープ)優勝を思い出した」と神宮のグラウンドに感慨深いものを感じていた古葉監督。「(試合に)入ると試合のことだけ」と50以上も年の離れた学生を勝利に導いたのはやはり名将の采配と言えるだろう。

 報道陣のリクエストに応じて、10回162球を投げ切ったエース伊藤和雄(4年)とガッチリと握手。そして「今年のドラフト1位です」と笑いながら伊藤の頭をなでた目は、孫を見つめるような優しさに変わっていた。
 会見後、ロッカールームの前で多くの知人や戦友から握手を求められた75歳の名将。その姿に厳しくも温厚な人柄がにじみ出ていた。

<了>
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著者プロフィール

 1980年12月5日生まれ。小学校時代はリトルリーグでプレーしていたが、中学時代からは野球観戦に没頭。極端な言い方をすれば、野球を観戦するためならば、どこへでも行ってしまう。2004年からスポーツライターとなり、野球雑誌『ホームラン』などに寄稿している。また、2005年からはABCテレビ『速報甲子園への道』のリサーチャーとしても活動中。

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