全米が注目! マリナーズの新人右腕、マイケル・ピネダとは?

丹羽政善

会見では緊張して言葉が出ないときも

チームにはベネズエラ出身でスペイン語を話すエースのヘルナンデスがいる。手前はピネダ 【Getty Images】

 マウンドでは自信に満ちあふれているが、新人らしいというか、まだ22歳だということを思い出させてくれるのは、試合後の会見のとき。多くの記者に囲まれると、緊張してしまって言葉が出てこない。

 米国人記者は、手を変え、品を変え言葉を引き出そうとするが、聞き方を変えると、ピネダは質問の意味が理解できなくなってますます無口になる悪循環。英語に不慣れなことは事実だが、それ以上に頭が真っ白になってしまうようだ。

 昨年までは記者に囲まれたこともなかった。今は、全米のメディアから独占インタビューの以来が殺到し、広報が制限をかけているほど。急に囲まれる存在になって、本人は戸惑っているのだが取材嫌いというわけではないよう。

 1対1になると、たどたどしい英語ながらも、一生懸命説明してくれる。先日、囲み取材のなかで、「試合途中で左肩が開き気味だったので直した」と話したことがあり、そのことをほかの記者がいなくなってから、「コーチか捕手に指摘されたのか」と確認すると、「違う、違う」と首を振り、「ボールが全部右に流れていたので、左肩が早く開きすぎていると思ったんだ」と言いながら、その様子を実演してくれた。
 英語で説明できなければ、身ぶり手ぶりでとにかく伝えようとする。その姿勢が彼らしい。

 ちなみに、現在のピネダの英語レベルと活躍の程度を考えたら、スペイン語の通訳をつけるのが普通。フェリックス・フェルナンデスも1年目は、通訳を介してメディアに対応した。マリナーズにはスペイン語を話せる広報もいる。しかし会見のときなど、広報はピネダの横に立ち、彼が助けを求めたときだけ質問を訳す。答えを訳すことはない。ピネダはできるだけ自分の言葉で伝えたいと考えているのだそうだ。

“意外性”が注目を集める一つの理由

 さて、練習で本塁打を打った後、彼は「打席に立つのが楽しみだ」と話していた。その機会は先週末の21日のパドレス戦で巡って来たが、3打数無安打に終わっている。
 ところが足の速さには多くがあぜん。ピッチャーゴロを打ったときに、相手がはじいたと見るや、一塁へ急加速してセーフにしてしまった。記録はエラーだったが、あの体格であのスピードとは……。誰もが目を見張った。

 結局、彼の場合、そんな意外性が注目される理由にもなっているよう。あれだけ体が大きいのに、体の使い方がスムーズ。若いパワーピッチャーなのに、制球力が抜群、マウンド上で感情を表すことはない。

 こんなシーンも目にしたことがある。キャンプ地で彼が歩いていると、子どもたちが遠巻きに見ていた。どこか怖がっているようなところがある。ピネダの体格は、プロレスラー以上。顔も、ちょっといかつい。
 しかしそんな子どもたちに彼は、ウィンクをしたりする。すると子どもたちの警戒が一気に解ける。彼自身、そのギャップを楽しんでいるようなところがあった。

 さて、27日(日本時間28日)はいよいよヤンキース戦だ。この試合で好投すれば、彼の名前は、いよいよ全米中にとどろくことになるだろう。

<了>

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著者プロフィール

1967年、愛知県生まれ。立教大学経済学部卒業。出版社に勤務の後、95年秋に渡米。インディアナ州立大学スポーツマーケティング学部卒業。シアトルに居を構え、MLB、NBAなど現地のスポーツを精力的に取材し、コラムや記事の配信を行う。

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